思春期は〇検査が嫌

今日は養護教諭時代に直面したある課題に取り組んだことをお話します。

学校における児童生徒の健康診断は、4月から6月30日までに実施するよう法律で定められています。

学校健診の中でも養護教諭や担任の負担が大きいのは尿検査です。
1回目の検査で3日間、2回目は2日間、3回目は1日と組まれていて、未提出者を2回目、3回目で拾うなど全員が実施できるよう配慮されています。
(地区によって違いがあります。)

尿検査の容器や袋に名前シールを貼る、学級ごとの回収袋と提出チェック表の準備などを生徒保健委員と進めたり、担任や教職員へ検査の意義や流れなどを説明し協力を求めます。

小学生までは保護者が管理してくれるため、一部の家庭に出し忘れはあっても
わざと提出しないという家庭はありませんでした。

それが、中学生になると尿の提出を「めんどくさい」「忘れてた」と言って
期日までに提出しない生徒があまりに多いことに驚きました。(在籍の約1割)

近隣の養護教諭に相談すると「中学生はこんなもんよ」と言い、中には、紅茶やペットの尿を入れて大騒ぎになったという事例を苦笑いで話す先輩もいました。


検査後、しばらく経ってから、提出しなかったヤンキーのひとりにさりげなく尿検査の話を振ると
「なんで、俺の体の中から出たものを人に見せないといけないわけ?」
と抵抗感があることがわかりました。


小学生の時は保護者の管理もあり、すんなり受け入れていた尿検査は、思春期になると尿、排泄物に対する羞恥心が芽生え、抵抗を感じる生徒にとってはよほどの意味を持たないと行動に移さないのだと考えました。

彼らの気持ちを受け止めた上で、どうやったら抵抗を少なくして提出してもらえるかを保健室にきた生徒や保健委員と話しあってみました。

その結果でた案が以下の通りです。
・尿検査の1日目から学級ごとの提出状況を一覧にした資料を担任に配布する
 (担任は面白くなかったかも)
・教室の回収袋を透明から不透明な袋(Uパックレジ袋)に変える
・ヤンキーたちには尿を出すといいことがあるとご褒美を期待させる
・生徒保健委員にも労いのご褒美を用意する
・保健室での提出もOKとする


その後、検査前の説明で教職員には、過去に学校検診で重大な腎臓疾患が見つかった事例があり、生徒の健康を守る上では欠かせない検査であることから全員提出を目指したいと伝えました。
また、一部の生徒に羞恥心や抵抗感があることを伝え、学級での回収時の配慮をおねがいし、希望者には保健室での採尿、提出も可能と提案しました。


そうした取り組みを続けると年々理解してくれる生徒や協力してくれる職員が増え、最終的には勤務5年目で全員提出を達成することができました。
(これは私の養護教諭人生の中で1回きりの偉業でした。)


最初はただめんどくさいだけで屁理屈を並べているだけだろうと思っていましたが、排泄というプライベートなことに敏感に反応するのが思春期なんだと理解し、抵抗感を和らげるための方法を生徒たちと話し合い、進めていったことがいい結果につながったのだろうと振り返って感じました。
(ご褒美作戦は職員には内緒です。)

この経験はのちの思春期対応にも活かすことができました。

思春期にとっての「たかが尿、されど尿」というお話でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?