脱出!~タントラマンへの道(第83話)
--風疹に罹ったことで、しばらくは応援団を休むことが出来たとしても、風疹はいずれ治ってしまいますよね? どうしたのですか?
TM:そう。「治ってしまう前に絶対に辞めなくてはならない!」と必死でしたよ。
なぜかと言うと、夏休みが直前に迫っていたからです。
夏休みには合宿が行われるのですが、経験した先輩曰く、それは地獄そのものだと。
例えば、上級生が下級生を「竹刀」で殴ることによって、「竹刀」が何本も折れるんだそうです。他にも当然、殴る蹴るの暴力もあるでしょうからね。
普段の練習でさえ非科学的に思えてついていけない自分が、そんな地獄のような合宿に耐えられるわけがないし、耐えたいとも思わなかったですからね。
なので、最悪、指名手配を逃れて逃亡生活を送る殺人犯のような生活も覚悟していましたね。
--はははっ!(笑) 逃亡生活ですって!? じゃあ、福田和子や市橋達也みたいに逃亡中に整形手術をするなんてことも考えましたか?
TM:いやいや、さすがにそこまでは思い至りませんでしたね。
でも、もし、本当に逃亡し続けるしかなくなった場合には、思いついたかもしれません。人間、必死になればなんとかしようとしますからね。
で、僕の場合は、別の形でなんとかなったんですよ。
--整形手術はしなくて済んだと?(笑)
TM:はい!(笑)
風疹療養中という猶予期間を有効活用するために、
それまでほとんど講義に出ることが出来なかったためにほとんど手つかずだった勉学の遅れを取り戻そうとしていたんです。
それと並行して、大学のこともほとんど知らなかったので、今更ながらそれらの情報が記されている入学時にもらった資料を見たりしていました。
その中で、「学生部」という部署の存在を知ったんです。
学生の相談事に対応してくれる部署です。
僕には、そこが「駆け込み寺」のように思えたので、症状が治まっていよいよ活動に戻らなければならなくなった直前のタイミングで駆け込んだんです。
--無事に駆け込めたんですね?
TM:はい。正式に休暇をもらえていたので、先輩の「張り込み」もなかったですからね。それと、キャンパス内で団員に会うリスクを少なくするために、応援団の練習時間中を狙ったんですよ。で、なんとか無事に学生部に駆け込むことが出来ました。
--で、どうなったんですか?
TM:それまでは、どれだけ退団希望の意思を上級生に伝えても、3年部員までで止まっていたんです。幹部(4年(回)生)までは届いていなかったんですね。
ところが、学生部に駆け込んでみると、幹部に直接連絡をしてくれたので、とんとん拍子に退団手続きが行われるようになったんですよ。
これまで散々苦しんで来たのは何だったのか? って不思議なくらいあっさりと辞めることができました。
学生部さん、ありがとうございます! でしたよ、ホントに。
--なるほど。確かに、応援団も大学の部活動のひとつに過ぎないのですから、問題を拗らせて活動禁止になるようなことは避けたかったんでしょうね。
TM:そうですね。もし、これが『虎の穴』だったら大変でしたよ。
僕は「裏切者」として命を狙われ続けることになったでしょう!(笑)
--じゃあ、辞めてからも、嫌がらせとかは無かったんですね?
TM:はい。キャンパスや街中で見かけた時には普通に挨拶はしましたがそれ以上は何もなく、何事も無かったかのような感じでしたね。近況を訊かれたり、こちらから報告するなんてことも無かったので、全くの他人みたいになりました。
--なんとなく寂しい感じもしますね。
TM:そうですねぇ。ひとりひとりはみんな良い人たちでしたからね。
それなのに、団という組織全体になると、付き合いきれない存在になってしまうのはなんでなんでしょうね。
ま、自分がその場(団体)に馴染めなかっただけ、相性が悪かっただけなのかもしれないけど、集団の中では自分の考えよりも組織の命令に従うことに
疑問を感じにくい人が集まっていたのかもしれません。
当時、応援団出身者は有名企業に採用されやすかった理由も、そんなところにあるのでしょう。
--辞めた後は、どうなったんですか?
ミッション系の華やかな大学だったんでしょう? 楽しくて明るいキャンパス生活になりましたか?
--それがねぇ、なかなかそう簡単にはいかなかったんですよ~。
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