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子犬のいる日々~タントラマンへの道(第35話)

番犬失格!?

いよいよ子犬を迎えに行く日がやってきた。
お迎えに行くのは母とオレのお役目になった。

妹は風邪をひいてしまったため留守番となり、
父は日曜大工で犬小屋を作り&妹の看病担当となった。

祖父の家までは電車を乗り継いで2時間ほどかかるのだが、
まだ見ぬ子犬に早く会いたくて会いたくてたまらなかった。

ようやく祖父の家に到着すると、子犬は祖父の家の敷地の入り口近くに置かれた小さな小屋に繋がれていた。

赤ちゃん犬を想像していたのだが、それよりはかなり大きく、生後3カ月程らしく、既に乳離れしているとのことだった。

全身の毛がムクムクとしていて、テリア特有の口髭も一丁前に生やしていた。
犬と言えば日本犬しか見たことが無かったので、テリア系の顔は新鮮だった。子供なのに賢人(犬)のような雰囲気が可愛らしくて一目で気に入ってしまった。

「ムクムクしてるから『ムク』やな。」と言う祖父の一声で、彼(雄犬だった)の名は『ムク』に決まった。

買えり際に、謝礼のためにムクの実家に立ち寄った。
大急ぎで母親の元に駆け寄って行くムクを見ると、なんだか可哀そうでたまらなかった。
実際、もし、母犬と一緒に北海道に行って牧場で走り回って暮らすことが出来ていたら、ムクの人生はもっと幸せなものになっていたのかもしれない。
そう思う理由はまた後で記述するつもりだ。

母親との束の間の再会、そして永遠の別れの後、ムクは最初で最後の電車を経験した。
当時は犬をケージに入れなくても電車に乗せてもらえたのである。

自宅の最寄り駅から自宅までは上り坂を15分ほど歩かなければならなかったのだが、ムクは元気に完走することができた。

家では父と妹が待っていて、犬小屋は既に完成していた。
子犬を初めて招き入れた際には、湯たんぽとカチコチと音が聞こえる置時計をタオルにくるんで置いてあげると母犬代わりになるらしい、という話を聞いていたので実行した。

当時は、飼い犬は室外で飼うのが一般的だったと思う。
なので、ムクを室内で飼うという発想は全くなかったのだが、
今から思うとかわいそうだったな。

ちなみに、二代目の愛犬は、玄関内に犬小屋を置いてもらい、リビングや気キッチンへの出入りは自由だった。ただし、二階へは本人が階段が怖いのか、窓が目の位置より高いところにしかないのが怖いのか、いずれにしても階段を上ることはしなかった。

そして、現在の三代目は、階段の上り下りをものともしないため、もう家中どこでも自由に使っている。寝るときも一緒にベッドインしているし、こちらがベッドを使っていない日中も奴はベッドでくつろいでいるので、ベッドの利用時間は奴の方が圧倒的に長い。

ムクがやってきて以来、ムクが我が家の中心になったようだった。
ムクは外にいるため、オレも妹も、しょっちゅう家の外に出てムクの様子を見に行っては、ムクの様子を報告しあうのであった。

基本的に散歩は朝と夕方の二回。でも、朝の散歩は抜きにされることも多かったかな。

その代わり、休日には家族総出で近所の山を登ったりして、本当にムクは家族の一員になっていた。

でも、当初の計画、目的だったはずの「番犬」としての役割を果たせるかどうかは怪しかった。

なにしろ、人懐っこすぎたのだ!

(つづく)

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