1ヶ月で技術士一次試験(農業部門)に合格する方法 ~脱「過去問やってりゃ良いよ」~

 技術士一次試験(農業部門)の受験に向け、私が試した勉強方法について記述します。

農業部門

1. この記事を書いた理由

1) 農業部門の参考書(過去問集では無い)が市販されてない
 2020年時点で、専門科目の参考書を見つけられませんでした(私の調査不足の可能性もあります笑)。よって、技術士協会HPでアップロードされている過去問を解くしか勉強手段が有りませんでした。
 ただ、急に過去問を見せられても1問も解けない、私のような人間もいる訳ですよね。なので、そういった方に合格できた勉強方法を共有できればと思い、書かせて頂きました。

2) 具体的な勉強方法に関する情報が乏しい
 技術士試験の中で農業部門は比較的マイナーな分野です。参考書売ってるの見つけられない程ですからね。こんな状況なので、「こうやって合格できたよ」といった情報も非常に僅少です。おまけに、他の分野の合格日記を見ても「とにかく過去問を解こう」しか書いてなくて、私にとっては何の役にも立ちませんでした。この“無い情報”を必死に集めようとする作業を皆さんには経験して欲しくないので、勉強方法の一例として情報共有させて頂きました。


2. この記事を見て頂きたい方

・勉強できる時間が少ない方
・出題分野の知識を学校で習ってない方
・過去問を見たけど答えが全然分からない方
 この記事は、受験に向けて基礎的な知識を習得しつつ、効率的に過去問を解けるようになりたい方を想定して書かせて頂きました。私は社会人1年目で、生物学を専門とします。基礎科目は物理・化学・数学の問題が半分以上を占め、専門科目も生物学の範疇を超えた問題ばかりなので、出題される分野を全然カバー出来ていない状態でした。おまけに1ヶ月しか勉強時間がない。。。そんな状況でも何とか合格できましたので、もし境遇の近い受験生の方がいれば是非見て頂ければと思います。


3. 技術士一次試験について

 技術士補になるための試験です。技術士になるためには、技術士補として実務経験を数年間経て、二次試験に合格する必要があります。技術士補・技術士ともに国家資格ですので、社会人の方は昇進や自己啓発の材料に、学生の方は就活のアピール等になることと思います。
 一次試験は、基礎科目、適性科目、専門科目から成ります。全科目で50%以上の得点を取れば合格となります。3科目の合計点が50%以上であっても、一科目でも基準に満たないと合格にならないので注意が必要です。詳しくは技術士協会HPをご覧頂ければと思います。


4. 勉強方法

 さて、本題ですね。基礎科目、適性科目、専門科目の順で書かせて頂きます。
1) 基礎科目
 基礎科目は、1群:設計・計画、2群:情報・倫理、3群:解析、4群:材料・化学・バイオ、5群:環境・エネルギー・技術から成ります。各群で、出題される6問から3問を選び、その正答数の合計が点数となります。
 私は、以下の方法で勉強を進めました。
・参考書を読む(3週間):知識の暗記&問題の解き方の理解
・過去問で確認(1週間):参考書の情報で対応できる問題を探し、繰り返し解く作業。
※ 参考書は写真の通り、日刊工業新聞社発行のものを用いました。過去問集は購入せず、技術士協会HPの過去問・回答を使いました。

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各群の勉強方法は以下の通りです。
● 1群:設計・計画に関するもの
● 2群:情報・倫理に関するもの
● 3群:解析に関するもの
1、2、3群の勉強法は、問題の解き方を覚える作業、用語を覚える作業、公式を覚える作業に分かれます。
「問題の解き方を覚える」
 参考書の例題は、必ず解き方をマスターした方が良いです。例題の数はそこまで多くありませんが、全て過去に繰り返し出題されたものばかりです。問題回答に要する数学の知識も高校の数学IIレベル迄なので、解き方さえ覚えれば対応できます。

「用語を覚える」
 毎年、用語の意味を理解していれば解ける問題がいくつか出題されています。例えば、1群では最適化問題とその事例、荷重と座屈、製図法(角法の特徴)などが繰り返し出題されており、これらの内容は参考書でしっかり説明されています。ちなみに、先程紹介した参考書では該当部分が太字や下線で強調されており、必要な知識を効率的に勉強することが出来ました。

「公式のイメージを覚える」
 実は、公式の形さえ覚えていれば難しい計算をしなくても解ける問題がチラホラ有ります。私は、物理学は中学3年生までの知識しかなく、数学は主要5科目の中で最も苦手でした。そのため、1ヶ月間で公式を理解する余裕と能力は有りませんでした。そんな方向けの裏技として、数式をフィーリングで覚えるという方法があります。
 例えば、3群のばね質点の問題では、固有振動数が角度によって変わらないこと、ばね係数の計算方法が並列と直列で異なることを知っているだけで解ける問題が有りました。また、マクローリンやオイラーなどの数式のイメージを覚えておくだけで選択肢を絞れる問題なんかも出題されていました。ただ、この方法は過去問を先に見て対象とする公式を絞り、その上で自分の中でルールを作る必要があります。

● 4群:材料・化学・バイオに関するもの
 4群については、「問題の解き方を覚える」作業を最優先にした方が良いと思います。参考書の例題の解き方をマスターし、熱化学方程式、二酸化炭素の生成量など、比較的単純な計算で解ける問題を確実に取りましょう。
 その次に、「知識を詰め込む」作業です。理論、無機、有機&バイオから出題されるので、全て網羅しようとすると結構な勉強量になります。個人的に勉強が大変な順に並べると、
 必要な知識量:無機 > 有機&バイオ > 理論
 問題の難易度:無機 > 理論 > 有機&バイオ
です。なので、無機は可能な限りの勉強に留め、答えが分かればラッキー的な感じで扱うのが良いと思います。理論、有機&バイオはサービス問題も多いので、参考書を見ながら必要な知識をしっかり勉強しておくことをお勧めします。

● 5群:環境・エネルギー・技術に関するもの
 5群については、ひたすら「知識を詰め込む」作業です。といっても、問題の解きやすさは分野によって異なると思います。必要な知識量と問題の難易度を考慮し、思い出せる限りで分類すると、
・解きやすい:資源・ごみ問題、環境問題、生物多様性、エネルギーの種類と特徴、SDGs
・解きにくい:エネルギーの歴史と世界情勢、技術史の偉人と発明品
といった形でした。上記の分類については個人差が大きいと思います。大事なのは勉強時間が少ない中で点数をいかに稼ぐかですので、覚えやすい単元を優先して知識を詰め込む方が良いと思います。5群については勉強時間に比例して点数が稼げると思います。


2) 適性科目
 適性科目は、技術士としての資質を問われる問題です。出題される15問に全て回答する形式です。
 この科目については、参考書を見ながら過去問の答え合わせを繰り返す作業を3日程行いました。特に、技術士法や倫理規定の穴埋め、知的財産権と産業財産権、PL法の仕組み等に関連する問題については、上記の作業を入念に行った方が良いと思います。私の場合、過去問の回答だけを見ても腑に落ちない部分が多かったので、参考書の解説を読んでおいたお蔭で、問題の解答に納得した状態で試験に臨むことが出来ました。
 適性科目は2019年度試験から難化傾向にあるそうです。確かに、一昨年までは過去問の解答さえ覚えていれば満点近く取れる内容でした。一方で、最近は“選択肢の中で異なるものの数”を解かせる問題が多く出題されるほか、時事問題に関連する独自問題も出題されるようになりました。なので、これらの対策しようの無い問題で落としても良いように、参考書+過去問5年分の見直しはやっておくのが無難です。

※参考書は写真の通り、日刊工業新聞社発行のものを用いました。過去問集は購入せず、技術士協会HPの過去問・回答を使いました。

適正


3) 専門科目
 専門科目は、「過去問を参考書化する」という作業に終始しました(4週間)。具体的には、12年間分の過去問の答えに赤丸をつけた資料を作る → ひたすら選択肢を覚える、という勉強法を取りました。資料はこんな感じです。

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 この勉強法が農業部門で有効な理由は以下の3つです。
・難しい計算問題がない
・出題問題の半数以上が“不適切な選択肢を選べ”系
・繰り返し出題される問題がある
 要は、過去問の穴埋め問題の完成型と、“不適切な選択肢”以外の部分は覚えるべき知識なので、この内容を参考書とすれば良いのです。加えて重要なのが、“不適切な選択肢”の中で、どの部分が誤りか把握することです。この部分は、言葉を変え、出題形式を変え、繰り返し出題されている印象を受けます。該当部分の情報・説明は大方ネットに載っていますので、その知識を集中的に覚えることをお勧めします。
 また、過去問を見返すと、出題頻度の高い設問がいくつかあることが分かります。種子の種類と構造、根粒菌、接ぎ木、農薬取り締まり法、コメ・茶の基礎知識、食中毒、流行性の疫病、牛肉のランク分け、圃場排水、圃場の種類、常流・射流、農村景観、生態系保全の取り組み、火山岩の種類と特性あたりは頻繁に出題されている印象を受けます。この傾向が見えてくると、ある程度自信をもって試験に臨めることと思います。
 余裕があれば、受験年の農業情勢について情報を仕入れておくと良いかもしれません。食料自給率の推移や、輸入出量が昨年度と比べて大幅に異なる農作物等については出題される可能性が高いので、農林水産省の発行する農業白書などをチェックしておきましょう。
 専門科目は35題の中から25題を選び、その正答数を2倍した点数を算出します。出題範囲は、畜産/農芸化学/農業土木/農業及び蚕糸/農村地域計画/農村環境/植物保護です。基本的には、この中から解けそうな問題を選べば良いです。ただ、得意だと思ってた分野の問題が解けなかった時に焦るので、専門外の過去問の見直しも同時に進めることをお勧めします。

5. さいごに
 技術士一次試験の勉強方法について色々書きました。この方法で勉強を進め、私の受験結果は以下の通りでした。

点数

…ギリギリですね。特に専門科目。決して褒められた点数・勉強方法ではありませんが、何とか合格することが出来ました。良かった良かった。。
私のように「出題分野の大半に馴染みがない」「勉強時間がない」といった方が勉強を始める際に、この記事が少しでも参考になれば嬉しく思います。これから技術士補を受験される方、頑張ってください!


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