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【エネチェンジ】CO2バッテリーとは何か

こんにちは。MAKOです。
先日、エネチェンジ運営ファンド(JAPAN ENERGY FUND)がCO2バッテリー技術を有するイタリアのスタートアップ(Energy Dome)に出資したとのニュースがありました。

今回の件について「CO2バッテリーの仕組み」と共に私なりの見解を述べたいと思います。

CO2バッテリーシステムについて

簡単に説明すると仕組みは以下です。
充電
再エネ電力でコンプレッサーを稼働させてCO2を圧縮(液化)
※圧縮する際の放熱は水で蓄熱
放電
液化したCO2の圧力を解放して生み出されるCO2ガスによりタービンを回して発電
※蓄熱した水を気化熱に充てる

やっていることはボイラタービンのランキンサイクルと同じです。また、媒体が水(蒸気)からCO2に変わるので圧力変化はあれど常温でシステムを動かすことが出来ます。

CO2バッテリーのメリット

メリットは以下の通りです。
①レアメタルを使用しない
圧力と温度の変化で充放電する仕組みのため、リチウムといったレアメタルは不要であり、産出国などに依存しないカントリーリスクの少ない技術と言えます。
②既存のエンジニアリング技術で実現可能
コンプレッサー、タービン、水冷システムなど、すでに存在する技術を活用しているため、大きなイノベーションを必要とせず、お金さえあれば明日にでも実現可能です。
③バッテリーが劣化しない
リチウムイオンバッテリーとは異なり、機器の経年劣化を除いて蓄電性能の低下はありません。
④環境負荷が少ない
使用するのはCO2と水(共に循環使用)なので、レアメタル採掘による環境汚染や大気汚染はありません。
⑤系統に慣性力と調整力をもたらす
火力発電と同様にタービンを使用するため、慣性力と調整力を系統にもたらす(停電を防ぐ)ことが出来ます。
※太陽光、風力、蓄電池はインバーターを使用するため、量が増えると系統を弱体化させる(停電しやすくなる)と言われています。

CO2バッテリーのデメリット

デメリットは以下の通りです。
⑥広い設置場所が必要
気化されたCO2を貯めるドームを設置する必要があるため、かなり広い設置場所が必要です。リチウムイオン蓄電池のように工場の空いた場所にコンテナを設置するのとは異なります。


⑦小規模には向かない(大規模向け)

良くも悪くもスケールメリットが活かせるシステムのため、数MWh程度の小規模であればリチウムイオン電池よりも割高になるでしょう。

所感

前述の通り、既存のエンジニアリング技術で実現可能なため、大規模蓄電池としての普及は早いかもしれません。一方で、蓄電池のようなパッケージ品ではなく完全なプラント設備のため、設備としてのスケールメリットはあれど量産効果による将来的なコストダウンは見込めないでしょう。

よっておそらくこのシステムの特許ライセンス料がEnergy Domeの収益源になると思われます。
またこのシステムの面白いところはドームの体積(CO2ガス体積)でバッテリーとしての出力が決まる点です。巨大かつ複数のドームが作れる土地ならばGWhクラスのバッテリー容量も夢ではありません。

日本に建設するとしたら

もしCO2バッテリーを建設するなら土地が広い北海道などが適していると思います。将来的に北海道〜本州との送電網は増強されるようですし、北海道には洋上風力が大量に導入される見込みなので蓄電池の需要も大きいはずです。

JAPAN ENERGY FUND(JEF)

城口CEOにとってスタートアップ投資は情報収集のためであり投資自体が目的ではないそうです。一見、孫正義さんのソフトバンク・ビジョン・ファンドに似ていますが、投資比率は数%程度に抑えられており、あくまでもコネクション作りが目的のようです。

スタートアップへの投資と聞くとリスクが大きいように思われるかもしれませんが、日本企業との橋渡しという役割が最初にあり、付加的要素として情報収集とリターンがあるのでしょう。よく考えられたビジネスモデルだと思います。

まとめ

今回はCO2バッテリーという興味深い投資先だったため深掘りしてみました。ちなみにこのシステムで一番お金がかかりそつなのはドームですが、「別に気中の袋だけで良くない?」と思ったんですがどうなんでしょう。
日本のプラントメーカが本気を出したら(そこが1番のハードルかもしれないが)作れてしまいそうな気がしますが、ライセンス収入狙いであればむしろその方がマネタイズとしては都合が良いのかもしれませんね。

将来的にCO2バッテリーが普及するかどうかは分かりませんが、こういった未知の技術をカタチにするスタートアップは今後も出てくるでしょうし、ディープテックに投資すること自体はとても社会的意義のあることだと私は思います。
本日は以上です。

P.S.
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