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Note 120: Om. Art Gallary「『静かな時間』絵画展」

2012年9月3日金曜日、南青山のOm. Art Gallaryで、「『静かな時間』絵画展」を見てきた。

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以前もnoteで紹介したが、Om. Art Gallaryは、アングラ劇団「月蝕歌劇団」他で出演する女優の傍ら、舞台美術も担当されている真夢さんが開廊された小さなギャラリーで、普段は真夢さんの絵画やグッズが常設されているが、今回は初の企画展だ。

『静かな時間』は、これもnoteで先行上映イベントの話をしたが、月蝕に俳優として出演されることもある、テレビマンの友利栄太郎さんが撮影したドキュメンタリー映画で、月蝕歌劇団という小劇場の女優さんたちが、コロナ禍による劇団活動の中止に伴ってどういう影響を受けたか、その葛藤を、インタビューを中心に描いている。

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今回の絵画展では、映画に登場する絵画の原画と、チラシの原画、そして先行上映会後のライブで、かつてのトップ女優であった倉敷あみさんが被った仮面や、絵画を印刷したポチ袋といったグッズを展示している。

映画に出てきた絵画の原画が見られるわけで、不思議な楽しさがある。
ぼくは名画がガラス越しに置いてあるような美術館以外で絵画をしげしげと見るということを、このOm. Art Gallaryでほとんど初めて体験して、キャンバスに描かれた絵というのは立体芸術なんだなーと思った。表面の絵の具のマチエールはもちろん、キャンバスの側面(厚みの部分)に絵の具が塗ってあるなんて、言われて初めて知って、へぇーと思ったのである。
今回は、映画のスクリーンに映し出された絵画が、スクリーンを飛び出して立体のキャンバスで見られるわけで、あらためて感慨がある。

また真夢さんにインタビューさせてもらった。

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--映画『静かな時間』に絵画を描いてって話は、企画当初からあったんですか。
「制作者の友利さんに言わせると、むしろ、私の絵がきっかけで映画の企画が始まったらしいです(笑)。2020年の4月頃に、コロナ禍でバタバタッと演劇が中止になったときに、私の、中止になった公演を見に来てくださるはずだったファンの方に、真夢さん映像配信でもしてくださいってネットで言われて、それでちょっと『ツイキャス』をやってたんです。
「そこでいろいろ、よもやま話をしてたら、またファンの方にチャットボックスで、スケッチブックに絵を描いてください、月蝕の女優さんの絵を描いてくださいって言われて、高田ゆかさんだったら描けるかなと思って、さらっと描いてみたんです」
--見てました、その配信。超楽しかったです。すごくリクエストに応えてくれるんだなーって思ってました(笑)。
「楽しかったなら良かったです。まあ出来ることと出来ないことがありますけどね(笑)。
「で、その絵を描くところをたまたま友利さんが見てて『真夢がツイキャス頑張ってるから俺も映画でも撮ろうか』みたいなことを思ったそうなんです。それで『描いてるところを撮影させて欲しい』と提案されました」

映画の中には、真っ白な画面に、徐々に感染とおぼしい赤い色が広がっていく世界地図と、巨大な竜がその下にのたくっているような絵が、少しずつ浮かび上がって来る様子が描かれている。

--あの、真っ白な中に絵が浮かび上がって来るの、すごく不思議だったんだけど、どうやって撮影したんですか。
「友利さんご夫妻が、暮らしてるお家に場所を用意してくださって、そこに少し描いては撮影し、少し描いては撮影しっていうのを繰り返して、コマ撮りをつないでアニメーションにして貰ったんです。最初は2時間ぐらいに収めてくれと言われてたんですけど、描いてるといろいろ思いついて、4時間ぐらい描きました」

絵の写真はバッチリ載せない。興味がある方は現地でご覧ください。

--下の方に描かれているのは龍ですね。
「はい。地球を守ってくれるみたいな感じで。ポジティブな気持ちで描きました」

この絵が浮かび上がってくる映像も、完成した原画も圧巻である。両方見られて良かった。心の底から感動したのである。

続いてチラシになった、3人の女優さんの絵の話。インタビューされていた劇団代表の白永歩美さんと、あと女優さんの慶徳優菜さんと、伊藤若菜さん。

「これは、ツイキャスの高田ゆかさんの絵を友利さんが気に入って、あんな風に描いてくれって言われて」
--白永さんは、映画の中では劇団代表として、キリッとしたプロの受け答えされてるけど、チラシの絵の中では、ふっと一息ついたみたいな、物思いにふけるみたいな、一瞬の表情ですね。
「そうですね。彼女と私は長い友達で、いっぱい話してるから、そういうのがいっぱい記憶にあるのかもしれない」

こうして、月蝕歌劇団とそれぞれの女優さんの今がいっぱい詰まった映画と、それを彩った絵画展が出来上がった。

--演劇と、真夢さんの美術と、コラボっていうかマリアージュが見られて、すごく楽しい展示ですね。
「ええ、それはもともとやりたかったことではあるんですけど、今回に関しては、やっぱり友利さんにやってみればって言われたんです。おみやげ(グッズ)を作りたかったから、映画の公開から時間が経っちゃいましたけど」

今回のグッズとしては、絵画2枚と、Om.のロゴをモチーフにしたポチ袋がある。

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「コロナ禍だけど、龍を描いたし、縁起がいい、上向きの絵だから、そのポチ袋にお金を入れて使ったら誰でもエネルギーを巡らせるきっかけになると思って」

むちゃくちゃポジティブな人である。やっぱりアートは強い。病気にも負けないのである。
Om. Art Gallaryは毎週金土日曜日、午後3時から9時までの開廊。「『静かな時間』絵画展」は9月26日までやっているので、お暇があればお寄りください。

(この項終わり)

会社員兼業ライターの深沢千尋です。いろいろ綴っていきますのでよろしくです。FaceBook、Twitterもやってますのでからんでください。 https://www.amazon.co.jp/l/B005CI82FA