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きっと気のせい

【概要】友達と道が違ったりすると多分よくあること

私はたった今注文したタラコパスタを食べながら、愛子が送ってきたlineメッセージについて考えている。彼女は私の心の慰めで親友だ。「浪人が決まった」と知らせたら、いち早く長文のメッセージをくれた人でもある。
完全に信頼しきっていた私はうっかり『大学生活楽しんでね、また一緒に遊ぼう』と送ってしまった。いや……うっかり、でもない。見返しても普通の内容だ。ただの友人ならごく一般的なSNSのやり取りの中に含まれるのではないだろうか。これに気に障るような内容が?

『忙しいから、ちょっと無理』

この文章を私は何度もなぞった。返信をどうしよう。というよりも……なんだ? この違和感。
パスタが冷めたら困ると思い、とりあえずスマホを置いて食べることに集中する。愛子と私は中高一貫でずっと仲が良い。一緒に出かけたり、勉強したり……。たった一つ違ったのは私が国立受験で愛子がAO推薦の私立だったことだ。しかしそれが何だというのだろう。
お互い道は違っても干渉はしない。愛子が秋に合格した時は、私も「おめでとう」と一緒に喜んだ。こっちはいつも通りだ……
このまま『なんか変じゃない?』と送信するのはやめておいた。何もなかった場合、少しの先走りが毒針となって友情を壊しかねない。
『そっか、じゃあいいよ』と打って消し、『もちろん、日程の会う日に』と打って消す。
どうしてこっちがこんなにも気を遣わなければならないのだろう。考えている自分がバカバカしいとスマホを乱暴に置いた。
浪人期間は友達との交流も少なくして、個人と向き合う時間を増やさなくてはいけない。いっそLine自体を今やめて……、と考えていたらまた通知がきた。

『明日はみんなでお疲れ様会やる予定だけど、来る人?』
グループラインからの通知だ。私はとりあえず、みんなの反応を待ってみる。
『行く!』『OK!』『やろう!』と次々と承諾の内容が連なっていく。そして『いいよ! いつでもー!』と愛子が返信した。
私はその返信に目が釘付けになった。ここでここまでの予測は正しいのかもしれないと再確認した。
グループラインを見るのを一旦やめ、もう一度メニューを取り出し、カフェラテを飲んだ。そして無意識に『日程合わせるよ』と愛子に返信していた。いっそ、はっきりさせたい。どうせ明日からは他人でいられる……
1、   2……と時間を数えて既読が付くのを待つ。
『ミリは来るの?』とグループラインで聞かれた。『ごめん、明日は無理だよ』と台本通りに返信し、愛子とのLineを開く。返信はなかった。



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