植田寿乃連載『令和を活きる、未来を拓く』第22回　イキイキと笑顔で働いている人たちに共通すること「忙しさに流される」ではなく「深く味わう」　～ワーク・エンゲージメントを探求　その４～

「自分が本当は何をやりたいのか、わからない」
「ひたすら真面目にやってきたけれど、本当に自分はやりたかったのだろうか？」

これは、２０代３０代の若い人たちからのキャリア研修で聴く「自分探しの旅の途中」の声ではありません。コーチングやキャリアカウンセリングで出会った５０代の経営職や、管理職の方々が思わず吐露された言葉です。ただひたすら、会社から言われた仕事・役割を頑張り、出世し、高い地位まで詰め上り詰め、数年後に役定や定年を迎える方から異口同音で聴きます。働き続ける意味が見えなくなり途方に暮れた状態です。ワーク・エンゲージメントロス状態です。しかし、もしかしたら失ったのではなく、これまでもワーク・エンゲージメントを感じることなく働いてきたのかもしれません。

★まぶしいぐらいの笑顔と、ポジティブなモチベーションパワー

　仕事の打ち合わせ、ショッピング、レストラン、ホテル、美容院で・・・・私は時々、私と対面して、接している人たちの表情、態度、雰囲気に引き込まれ、とても楽しい気分になるときがあります。その人たちの共通項は、まぶしいぐらいの笑顔と、ポジティブなモチベーションで、周りを照らすようなオーラ―を出しています。しかも、その表情や態度は演技でなく、心底の気持ちの状態を映し出しています。まさに、ワーク・エンゲージメントのオーラ―です。

・この人は仕事が大好きに違いない
・この人は誇りをもって働いているに違いない
・この人は、仕事を通じて周りの人に貢献することに喜びを得ているに違いない

彼らは、エンゲージメントの軸の５要素「意義」「強み」「誇り」「達成感」「成長」がどれも満たされている、つまりエンゲージメントの自分自身の太い軸が築かれた状態です。

★「忙しい」を禁句にしよう
　
皆、「責任」や「役割」を担って働きます。その責任や役割が大きくなったり増えたりすると、スケジュールが立て込んできます。そうると、思わず「忙しい」と言いたくなります。しかし、私は「忙しい」を自分の禁句として心しています。理由は、「忙しい」は、りっしんべん（心の字から転じた変）＋「亡くす」と書きます。忙しい=心を亡くした状態
「あー今週は忙しいけど頑張る」と言ったら、今週は心を亡くしてやるぞという宣言になってしまいます。実際に「今月は忙しくて、あっという間に１か月が過ぎてしまった」なんていうときは、自分の心の中に何も残っていません。これでは、ワーク・エンゲージメントは高まるどころか、消えていきます。日々のすべての仕事の瞬間を「深く味わう」ことこそが、自分のワーク・エンゲージメントを高めるための基本です。

　昭和の時代、長時間労働をして会社に身を尽くして、結果をだしている人が評価されていることがありました。令和時代になり、残業規制、働き方改革がどこの会社でも推進されていても、逆行するように雪だるまのように仕事を抱え込み、「忙しい」が口癖で、文句をいいつつも、自分に酔っているような様子すら見える５０代の経営陣や管理職をいまだに見かけます。仕事に忙殺された状態を充実感と勘違いしてしまっている人が多い。そういう人に限って、忙殺した日々が終わりそうになった時に、何も自分の心に中に残っていない状態に向き合い愕然となります。仕事を、自分の人生を深く味合わずに生きてしまったから空っぽいたいな感覚です。しかし、挽回できます。しっかり振り返り、味わえば、自分の仕事、人生が蘇り、心に残ったものが見えてきます。自分と向き合き、「軸」を育てましょう。

★ワーク・エンゲージメントに重要な自分を動機づける「軸」

・ポジションが上がれば？　ワーク・エンゲージメンが高まる？
・給料が増えればワーク・エンゲージメントは高まる？
・悩みや不満がなくなればワーク・エンゲージメントは高まる？

いずれも「いいえ」です。どれも、ワーク・エンゲージメントを高めることに直結しません。自分を動機づける「軸」ができているかどうか、それが太くなっているかどうかが重要です。

１　あたなの仕事の意義、意味は何ですか？
２　あなたは自分の強みを知り、それを仕事で発揮できていますか？
３　あなたは自分の仕事に誇り感じていますか？
４　あなたは仕事で達成感を味わっていますか？
５　あなたは仕事で成長していると感じますか？

この５つの質問に「はい、もちろんです」と胸をはってこたえられるようになったとき、自分自身を内面から動機づけるワーク・エンゲージメントの「軸」ができたといえます。
皆さん自身の「軸」は見えますか？どんな状態ですか？

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