You Raise Me Up(自分なりの和訳)

『You Raise Me Up』 という曲をご存知だろうか.元々は2002年にアイルランドやノルウェーを中心に活躍している「シークレット・ガーデン」により発表された曲である.しかし日本だとトリノ五輪金メダリストである荒川静香さんのフィギュアスケートの演技で用いられた「ケルティック・ウーマン」によるカバーver. が一番有名ではないだろうか.
 さて,そんな『You Raise Me Up』であるが,単刀直入に結論をズバッと最初に言ってしまうと僕はこの歌が非常に好きなのである.歌詞も学生時代に辞書を弾きながら和訳をして悦に入っていたことがあるくらい好きだ.もちろん当時はこの曲の背景にある宗教的な知識に気づきもせず得意顔をしていたわけなので,事情をよく知っている知識人から見れば,子供の背伸び以外の何物でもなかったわけだが,それに気づいたのは私が大学生になってからのことだった.
 まあそんな黒歴史は置いておいて,ふとしたきっかけで最近またこの歌を耳にする機会に恵まれた.当時の思い出も蘇ると同時に,何より聞いた状況がなかなか感動的だったもので,要は「お熱」になってしまったわけである(このコロナ禍の時代ではこんな何気ない言葉もブラックジョーク扱いになってしまうのである.困ったものだ).
 そんなわけで iTunes Store で曲を買った.あー,やっぱいいものはいい.すごくいい.最高である.ヒャッホー……と満足しているのだが,この点は仕事柄というべきか魂の性根というべきか,洋楽を聞くときは「音楽ばかり聴いて,やーね」みたいな顔の白い人たちからの(当然これは見知らぬ第三者,の意味である)声なき批判が耳に入り(もちろん妄想である),それならば理解を深めるためにもきちんと和訳しようではないか,という話になった.なったというか,したのである.言葉は正しく使わねばならない.
 さて,ネットで歌詞を調べてみたところ,もちろん原詩はヒットする……のだが,これまた結構なことで多くの心優しくまた英語が堪能な方々がもうすでに各々考えた対訳をアップロードしているではないか.やったぜこれを読めばわかっちゃうぜ満足だぁ……とならないのが捻くれ者というか,なんでもとりあえずは自分でやってみなければ気が済まない迷惑者の性である.
 以上のつまらない話が背景にあり,この度この曲の『思訳』を浅学非才を顧みずやってみたわけである.当然『思訳』と聞きなれない用語(というか造語)を使ったのには理由があるわけで,これは『和訳』『翻訳』ではないよ,という逃げの口上である.お前和訳するって息巻いてなかったか? とか言ってはいけない.息巻くのは息が続く限りどれだけでもぐるぐると巻いてやるわけだが,残念なことに私は根っからの小心者であり,「やあやあ我の解釈こそが素晴らしいものである.みなのものは平伏すが良い」などいった強者の発言は口が裂ける前に心が張り裂けてしまうのでしようにもできないのである.またそもそもシンプルにそんなことしようとも思っていない.
 自身の英語能力は傍目から見ても残念極まりないものであり,また歌詞だから単純に訳すだけではなくきちんとメッセージを届けられるように意図を汲み取らねばならない.考えるだけで縮こまりそうだがいざやってみるとこれはもうとてつもない恐ろしさで,ビールを飲まねばまともな思考が維持できないところであった.そしてビールを飲んだから私の思考は冴えに冴えたわけである.
「せっかく書いたんだから公開したいなあ.でもいざ公開して嘲笑の的になるだけならいざ知らず,拙訳を信じて第三者と話した時に恥をかくといった不幸な誰かを作ってはいけない.そうだ.『思ったことを書きましたよ,ちゃんとした和訳じゃないよ』と銘打っておけば,まあその辺の誤解は無くなるだろう」
 恐ろしいまでの自己保身である.我が身可愛さにこの世に2度と使われることがないであろう造語を送り出しておきながら,しめしめ,とすら考えているのである.なんだこいつ,社会的責任とか背負ってないのか?
 というわけで今から記すのは『You Raise Me Up』の歌詞を私が『自分なりに意訳』したものであり,原詩からはかなり単語的にも文法的にも逸脱していることは否めない.それどころか自分のポエム脳というか厨二病というか,「こうした方が僕好み!」という感じでどんどんどんどん拡張拡大解釈したものを付け加えている.『思訳』と名づけてその辺の社会的責任から逃げているわけだが当然逃げ切れるわけもなく,つまりは『You Raise Me Up』を下敷きにした(というかその物を使った)二次創作ポエムだと思って読んでほしい.

 さて,長くつまらない言い訳をあらかた言い終えたので,思訳を記す.もちろん著作権の問題があるため原詩は載せない(だったらそれを下敷きにしたこの訳もどうなんだ? とは思わないではないが……)ので各自でご確認いただきたい.


You Raise Me Up (あなたがいるから)

私がつまづいた時や心が動かなくなってしまった時
辛いことがあってがんじがらめになってしまった時
そんな時は私 静寂の中でずっと待ち続けています
あなたが隣に来て私の頭をそっと撫でてくれるまで

あなたがいるなら 私は困難だって乗り越えていける
あなたがいるなら 私は苦しくても乗り越えていける
あなたが抱いてくれたら それだけでぜんぶ 私は
あなたといるから 私は今日も 私を越えていける

求めない人間なんて 人生なんて あるわけがない
重ねた鼓動は忙しなく 不揃いのまま 泣くように
でもあなたが あなたといる喜びに包まれていれば
時々私は思う 永遠はきっとここにあるんだなって

あなたがいるなら 私はどんな山にでも登ってみせる
あなたがいるなら 私は嵐の海の上でも歩いてみせる
あなたを抱きしめている時 そのときだけは 私は
あなたといるから 私は明日へ 前へ歩いていける


あなたといたから 私はどんなことも乗り越えてきた
あなたといたから 私はどんなに辛くても歩いてきた
あなたに抱かれていたから 私は 強くなれたのです
あなたといるから 私は今日も明日も 生きて行ける

あなたがいるから 私はこれからも 幸せでいられる


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