マガジンのカバー画像

短歌一首評

3
運営しているクリエイター

#短歌評

【短歌一首評】朝雁よ つがひを群れを得て我はあまたの火事の上を飛びたし/七戸雅人

【短歌一首評】朝雁よ つがひを群れを得て我はあまたの火事の上を飛びたし/七戸雅人

朝雁よ つがひを群れを得て我はあまたの火事の上を飛びたし
 /七戸雅人「果樹園の魚《うを》」『羽根と根』創刊号

大意を取れば、孤独な〈我〉が地上から朝雁の群れを見上げ、その一員となって自分も空を飛びたいと思う、となろうか。

〈朝雁〉〈我〉〈あまた〉〈火事〉など文節の頭に顕われるA音の軽やかさと、〈よ〉〈〜を〜を〉〈〜の〜の〉という文節の末尾に隠されたO音の重たさが、あたたまった空気のような浮遊

もっとみる