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アドベント交換日記2018

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#斉藤志歩

思慮深いひつじ

思慮深いひつじ

 怪獣歌会の交換日記、四番目は斉藤志歩が担当する。

 『斉藤さんにとって、ぬいぐるみ(への愛)ってどういう存在ですか?』

 まるちゃんはぬいぐるみのひつじだ。よく「一切は空(くう)」と言う。

 言う、というのは便宜的な言葉遣いで、実際には私の声帯が普段より一オクターブ高い音域で振動するのだ。川野さんがぬいぐるみについて『かれらには心があって、話しかければ答えてくれるのだけど、それはわたしが与

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自由に生きて、自由に死んでくれ

自由に生きて、自由に死んでくれ

 斉藤です。

 前回の川野さんからの質問は以下のようなものだった。

 『人は自分に向けられる愛や関心からどうやって逃げて、あるいはどうやってそれらと折り合いをつけて生きているのか』

 難しい。人のことは知らないから、自分の話をしようと思う。

 私は性欲を感じることがあるが、ロマンティックな感情はよくわからない。いわゆる”交際”については、検討することがないわけではない。性的関係を持つにあた

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小説みたいに生きたくない

小説みたいに生きたくない

 斉藤です。今日は小説の話を書く。

 『先週の記事で、斉藤さんは「私は人生に物語を欲していないのかもしれない」と言っていました。
 でも斉藤さんは、小説をよく読みますよね。ドストエフスキーとかブロンテとかヘッセとか。ドストエフスキーなんかはすごく「物語」があると思うけど、斉藤さんはそうした物語をどう読んでいますか?』

 まず、人生に物語を求めることと、小説に物語を求めることは全く別の問題だ。

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見ること、書くこと、その自由

見ること、書くこと、その自由

 私は志賀直哉が好きだ。
 
 本を読むときに勝手に強化月間を設けることがある。昨年の夏は白樺派強化月間だった。武者小路、有島、里見らの作品を読み進む中で、気に入ったのが志賀だ。本当に面白いと思う。何がそんなに面白いのか、今回の記事で少しでも伝われば嬉しい。

 まずは作品から引用する。

『Kさんは勢よく燃え残りの薪を湖水へ遠く抛った。薪は赤い火の粉を散らしながら飛んでいった。それが、水に映って

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