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いつまでも失わないでほしいものとは

先日のひなあいでは森本が自身のネタへのキュー出しされたカンペを目が悪いためか読めず、眉間にしわ寄せながらカンペを注視している姿が映し出された。また髙橋みくにがカンペをチラチラ見ながら自分の持ちネタを話すところも映っていた。

こういうのってどうなんだろう。アメトーーク!では責任者の加地さんがフロアにでんと座り自らカンペを出すことが知られており、その圧に関しても芸人たちによって何度もネタにされてきたように「カンペあってのバラエティ」というのが一般の人にも浸透しているのは事実。ただ、それはお笑いの中の世界でやってほしくて日向坂の子たちがカンペを意識して進行してることをあまり露骨に出してほしくないなというのが僕の想い。そんなことどうでもいいというご意見は尊重するけど、個人的には彼女たちがバラエティの構図の中で力をつけていくことが必ずしも望ましいとは思えない。これが現代の天才と言われる渋谷凪咲であれば問題ない。芸人をも唸らせるそのワードセンスやスピード、キレはむしろバラエティフォーマットの中でこそ十二分に発揮されるから。

それに対して日向坂のいいところは「アマチュア感」「高校の部活っぽさ」だと思ってて、たとえば先日終了した東京五輪でメダリストを呼んでスタジオトークするのが恒例になったけど、あれで面白い人というのは計算して面白いことを言ってやろうという人ではなく司会の芸人に味を引き出された人の方が面白かったりするし、また一緒に出演している同じ競技の仲間とのトークが実はそうした芸人とのやりとりよりもよっぽど面白かったりするのは、まさに学校の部活によくいるおもしろキャラを思い出すからだと僕は思っている。バレーとかバスケとかソフトとか団体競技の人たちが出てきたときにそれが顕著で、仲間内での呼び方や小ネタや裏話が本当に面白かったりするし、それをよどみなく引き出す芸人さんとの協働作業によって面白くもなるということを五輪特番でも僕たちは見てきたはず。

日向坂(正確にはひらがなけやき)の番組が面白いと深夜がざわつきはじめた頃、彼女たちはひたすら思いついたことをしゃべり、本能のおもむくままに動き、何が正解かわからないなりに必死にやってた。それが結果、オードリーとケイマックスの魔法によって唯一無二の存在になった。なにもプロのテクやスキルがあったわけではないし、たぶんこれはスタジオでは滑り倒したんだろうなと窺い知れるテーマもなくはなかったけどそれでも次を見るのが楽しみで仕方なかった。

いまはどうか。キャプテンやかとしはもうベテランの域。カンペに乗ってオードリーにつっこんだり裏回し的なこともお手の物。冨田や渡邉美穂は計算して入る技術をすっかり身につけ、最近はそれが少しバレ始めている。何をしても言っても愛されるみーぱんはアイドルの鏡。品のないことはしないが躊躇することなく無茶振りにも応える。上村、濱岸、河田、おたけ、などポンコツでもかわいく微笑んでみてられる集団もおり、もはやいまの日向坂は無双状態に近い。

だからこそ。ひらがな時代の、「ここで負けたら終わり」という真剣さも再び彼女たちに求めるのは酷だろうか。それとももう国民的アイドルの地位まで来た彼女たちにそんなものは必要ないのだろうか。そんなことを何度目かの「これ盛ってるで」特集を見て笑いながらふと考える深夜2時。

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