なんと今頃!昨年の新聞歌壇掲載歌

各紙掲載日順です。全て 本名:久保哲也にて掲載されております。

『毎日歌壇』
加藤治郎さん選 2019年1月7日
留守宅のドアノブに ぷ と吊るされた回覧板が風のたび鳴る

伊藤一彦さん選 2019年1月21日
バイト君からバイトさんまたクボちゃんへ時は流れて時給は同じ

伊藤一彦さん選 2019年2月4日
おそらくは昭和時代を覚えている犬はこの世にもういないこと

伊藤一彦さん選 2019年3月18日 3席
追われていた私の影に「逃げてよ」と言われてしまうふり向いたとき

2019年5月13日 加藤治郎さん選
加湿器がぱふっと鳴いて止まったらシチリアからの手紙がとどく

毎日歌壇 米川千嘉子さん選 2019年6月11日
「どうしようもない」を頭につけたまま毎朝水で顔を洗った

2019年8月12日 加藤治郎さん選
夕暮れの新世界ではゆっくりと通天閣がひらがなになる

伊藤一彦さん選 2019年8月26日
関係者以外立ち入り禁止だが猫は一度も察してくれず

米川千嘉子さん選 2019年12月10日
情緒にて詠まれることを嫌うのか昨今雨が騒がしすぎる

『読売歌壇』
2019年2月18日 小池 光さん選 2席
さあ座れあんぱん食べろと母は言う五十を過ぎた僕に向かって

2019年6月24日 栗木京子さん選
車中にて歌をノートにとる時に隣の人に空けられた距離

2019年7月8日 小池光さん選
足踏みのミシンふみ込む母たちで動いていたといえる地球は

2019年12月10日 俵万智さん選  
オレンジはキウィに比べ真心に近くて坂を転がりやすい

『東京歌壇』

2019年1月13日 東直子さん選。特選2席
開いたら羽ばたくタイプの紙があり旧かなのゑを書くとおさまる

2019年1月27日 佐佐木幸綱さん選
温室の屋根の斜面が透明で積もった雪に落ち着きがない

2019年3月31日 佐佐木幸綱さん選。
先輩は古典落語の落ちだけを自分の手柄みたいに語る

2019年3月31日 東直子さん選
レーヨンを感覚だけで掴んだら一瞬さかなみたいだったよ

2019年9月29日 東直子さん選 特選一席
秋を呼ぶ手段としての「雨上がりひらけた場所へ椅子をおくだけ」

『日経歌壇』
2019年3月9日 三枝昂之さん選
さみしいと鼻水が出る気もするねしばらく月でもみて歩こうか

2019年3月30日 穂村弘さん選
鍵束の中に真夏の殉教者めいたひとつが少し曲がって

2019年4月13日 三枝昂之さん選
殻のある生き物たちは閉じこもる勇気をどこで得たのだろうか

2019年5月25日 穂村弘さん選 
明るいと光を引いて綺麗だが闇だと雨は感じるだけだ

2019年6月29日 穂村弘さん選
少年は無茶苦茶なので思春期に徹夜で口笛練習をする

2019年8月24日 三枝昂之さん選 
お互いに「そっちが惚れた」と言いあってこの暑いのに手を繋ぎます

2019年8月31日 穂村弘さん選 
捕まえてしまった大きなクワガタに挟まれている捕まえた指

2019年9月21日 穂村弘さん選
瓜売りに出会いませんか数々の路地裏に来る夏を巡って

2019年11月16日 穂村弘さん選
写真ではポテトサラダにそっくりなことがありますバニラアイスが

『産経歌壇』
2019年4月18日 小島ゆかりさん選
「洋梨の形に一度なりたい」と真夜中に聞く月のつぶやき

2019年6月20日 小島ゆかりさん選
AIと歌会してもいいけれど懇親会には来てくれるのか

2019年8月1日 小島ゆかりさん選 2席。  
一生涯おりることない駅ばかり並べて青い夏の路線図

2019年11月28日 小島ゆかりさん選
ドアノブとドアハンドルのドア達が寝かされている解体現場

『朝日歌壇』
2019年8月4日 永田和宏さん選 3席
晴れた日にポケットにいるアマガエルを守るぐらいの手の繋ぎ方


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