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アーチのこと

ロックバランシングを初めてからしばらくの期間はアーチ状の作品は作りませんでした。それまで海外の人が作ったアーチ形式の作品は目にしていましたが、風にびくともしない頑丈に見えるものばかりで、アーチ形状は自分が考えるデリケートなバランスで儚い存在のロックバランシングとは筋が違うように思っていたからです。

その後、いろいろ作っているうちに、積み上げるバランス以外に、寄りかからせるのにもバランスが必要な儚い形状があることが分かってきて、となると石と石が言わば寄りかかりあっているアーチでもデリケートで儚い形で作り上げられるはずと思ってアーチに手を出すようになりました。
それまでよく見かけたアーチ作品はアーチを構成する石と石をがっちり噛み合うような形で組み合わせて円弧を作り出しているものばかりでしたが、それを石と石の接点を極力小さくしてアーチ状にすればデリケートなバランスになると考えたわけです。

アーチは「積む」というより「組む」という感覚に近いですが、バランスをとる難しさはあり、その作業に面白味を感じて、今ではちょくちょくアーチ作品を作っています。
私のアーチ作品で意識しているのは、上に積み上げていくロックバランシング作品と同じように「風が吹いたら倒れそうな絶妙なバランス」で作り上げるということです。
写真の作品は2年前のもので、今となっては自分の中では「小品」というイメージではありますが、不安定な土台のうえにデリケートなアーチを作るシリーズの「はしり」となった作品です。案の定、風が吹いて崩れ落ち、そのことを「してやったり」と思えた作品です。

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