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#28 ライスボウルの話

今年の国内アメフトシーズンがほぼ終了した。残された主要大会は高校のクリスマスボウルと年明けのライスボウルになった。例年ならX1-X2、X2-X3の入れ替え戦が行われるが今年は入れ替えもなく、静かなシーズンオフの入りとなった。

さてここ数年、この季節になると耳にする主張がある。

ライスボウルは学生対社会人の対決をやめるべきだ。

公に主張したのは2018年シーズンに学生界を制した関西学院大学だったと記憶しているが、それよりも前から少しずつ話題に上っていた。関学は前シーズンのライスボウルで負傷者が出たことから、対等な勝負ができないとして主張していたものだ。そして、この議論は概ね学生側(学生チームとそのファン)から沸き起こっている。
果たしてそれからアメフト界全体でこの問題について話し合われた様子は見聞きしていないのだが、個人的にはこの意見には賛同できない。いちXリーグファンとして、この議論について考えてみたい。

現行のライスボウルを行うべきでないという論のうち、一番大きな声で叫ばれる理由は、選手の大型化による怪我のリスクである。
たしかにXリーグの選手は大きくなった。特にライン戦を繰り広げるOL、DLのサイズはNFLやアメリカの学生リーグと遜色ないチームもある。しかし、その間学生がまったくサイズアップしていないのだろうか。大学を卒業してXリーグに加入し、即戦力となっている選手は数多い。ウェートトレーニングの強化やサプリメントの改良で、社会人のみならず学生も体づくりに精を出しているのは間違いない。社会人だけが大型化しているわけではないのに、ライスボウルを学生対社会人の対戦でないようにするための論拠としては薄弱だ。
学生は社会人に比べて体が出来ていないからまともにぶつかると怪我をするという理屈も、同じ理由で通らないだろう。全く鍛えていないズブの素人とアメフト選手がぶつかればそれは危険だろう。しかし、学生チャンピオンとしてライスボウルに出場しているチームの選手がそんなに怪我するほどの鍛え方なのだろうか? 実際、過去何回かのライスボウルで学生側に怪我人が出ているのは事実だが、社会人側にも怪我人は出ている。コンタクトスポーツである以上、怪我を出さないように手加減する方が負傷するリスクがある。
社会人は一日中鍛え上げる時間があるから不公平だという意見もあるが、現在Xリーグで企業の活動の一環としてフットボール部を抱えているのは1部20チーム中3チームに過ぎない(富士通、パナソニック、警視庁)。あとはクラブチームなので選手は本業をこなしながら週末に練習や試合に臨んでいる。かたや学生はどうだろう?

次に挙げられる論として、社会人には外国人(アメリカ人)選手がいるから不公平だというもの。これも残念ながら的外れと言わざるを得ない。
Xリーグでは、各チームが契約できる外国籍選手は4人が上限とされている。また、プレー中一度にフィールドに立つことができるのは2人までだ。一方、学生リーグは学生であれば出場できるから、外国人選手を上限なく出場させることが理論上可能だ。とすれば、公平を期すなら学生の側に上限規制をかけるか、あるいは社会人の外国人の条件を撤廃することになるが、それでもいいのだろうか。
大学によって外国人選手がいるチームとそうでないチームがあるが、最近では日本の大学を卒業した外国人選手が帰国せずにXリーグでプレーすることが増えてきている。アメフト選手のキャリアとして日本でプレーすることがどれだけプラスになるかはわからないが、少なくとも大学であれ社会人であれ、正規に選手登録されたプレーヤーを排除することは極力避けなければならないのは間違いない。
アメフトもどれだけ本場アメリカのプレーに近づくか切磋琢磨しているのに、アメリカ人選手とプレーする機会を自ら捨てるのは非常にもったいない。

とりあえず来年1月3日は、関西学院大学とオービックの間でライスボウルが行われることが確定している。この顔合わせは7年ぶりとなる。2012年から3回続けて対戦してきたカードだが、個人的に印象に残っているのは2013年、第4クォーターに何度も逆転が起こり、オービックが残り1分弱で試合を決めたゲーム。関学が次々とスペシャルプレーを繰り出して黄金期と言われていたオービックを土俵際まで追い詰めた試合だ。先日の甲子園ボウルでも圧巻の試合運びを見せた学生王者だけに、正々堂々戦う姿勢を見せてほしいと心から願っている。

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