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ー暴走族の現状ー

 あまりメディアは少年犯罪の減少を取り上げませんが、令和元年度版犯罪白書によると、少年による犯罪件数は大きく減少しています。

 私は、過去に、駅員を経て、少年鑑別所の法務教官の任に当たったことがありますが(貴重な経験でした!)その経験から以下述べたいと思います。

 歴然としているのは暴走族の衰退です。昭和57年のピーク時3万人台を数えた少年人数は令和元年では3000人台です。それでもグループ数は134もあるということなので、小規模化は甚だしいと言えます。

 暴走族はといえば、かつては総長を中心に、親衛隊長、特攻隊長などと役割が割り振られてそれなりに組織立っていたと思います。中学校の番長とのつながりも濃く、番長グループが一般生徒から恐喝行為をおこなって、その金を暴走族に上納するという図式も多かったのではないでしょうか。暴走族で鳴らした少年は、しばしば暴力団にスカウトされるから、若者における反会性の縦軸は、明瞭だったと言えます。しかし、1992年の暴対法から、少年が思い切って家出したものの、組事務所で説得されて自宅に戻る例がありました。

 暴走行為については刑事罰が強化され、行政処分も重くなりました。検挙されれば免許取り消しは当然のこと、暴走行為に伴う違反がすべて累積され、二年も三年も免許が取れなくなりました。純粋にただ走りたいだけ、というバイク好きの少年にはこれはかなり痛かったと思います。

 問題は、若者文化のなかから暴走族や番長たちが消えて、反社会性という軸が無くなり、社会に正邪硬軟とりどりの情報が、優先順位抜きにちりばめられたとき、それにさらされた子ども達にどのようなことが起きるか、ということです。
 
 「俺はワルだ、お前たちとは考え方が違うのだ」と、学校の秩序に正面きって歯向かう輩は、今や絶滅に等しいと思います。だから今、教室はどこも、表面的には均質な雰囲気を漂わせて序列化や差別化を許さない。しかし、傷つけあいはどうしても起こってしまうから、その姿は陰湿になるばかりであります。



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