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Qosmo Lab

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「Qosmo Lab」では、Qosmoのメンバーの実験的な取り組みやプロジェクトの技術解説、制作の裏話などを個性豊かに配信しています。 Medium (English) htt… もっと読む
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記事一覧

Making of "Emergent Rhythm" — リアルタイムAI音響合成を用いたライブ・パフォーマンスの裏側

AIを用いてこれまでにない音楽体験を作り出せるか。本稿では昨年12月8日 MUTEK Japan (渋谷ストリームホール)で私たちが行ったパフォーマンス、「Emergent Rhythm — AI Generative Live Set」の裏側、技術的な詳細、パフォーマンスの実現に至った流れや動機などを解説します。 なお、MUTEKでのパフォーマンスのビジュアル面については、担当したQosmoの中嶋亮介が詳しい記事を書いています。イームズ夫妻の映像作品『Powers of

「しっくりくる」をAIでモデル化

AIの活用は多くが、人間が感覚的にやっていることや、専門家でなくてはてはできないような熟練を要する意思決定をデータを使って解決するケースです。一方で、実際にAIの予測の対象になっているものは需要予測だったり、与信だったり、故障検知だったり、最終的には正解の存在する問題であることが多いのが特にビジネスにおける傾向です。このような問題は明確に定義し、データ化しやすく、結果も検証しやすい特徴がある一方で、答えが一つではないような問題も世の中には沢山存在しますし、そのような問題をAI

Qosmo AI-Generated Rabbit Phase Calendar 2023 – 画像生成AIを用いたカレンダー・デザイン

Introduction あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。 毎年、Qosmoではグリーティングとしてささやかではありますが、贈り物をお届けしております。一昨年、今年とコロナ禍ということもあり、Qosmoオリジナル・マスクを制作いたしました。今年は年のはじめに必要なもの、兎年ということで、Qosmoオリジナル・カレンダー「 AI-Generated Rabbit Phase Calendar」を制作いたしました。古代より日本やアジア圏では月の模

画像生成AIを活用したオーディオビジュアル表現 - MUTEK.JPでの開発事例

12/8(木)に行われたMUTEK.JPにて、Nao Tokui — Emergent Rhythm (AI Generative Live Set) のビジュアルを担当しました。 「Emergent Rhythm」は、AIによってリアルタイムで生成された音のみを用いて構築される即興パフォーマンスです。音の生成にはSpectrogram GANやQosmoで開発しているNeutoneを使用し、それらを手懐け乗りこなす生成的なライブセットです。サウンド面の詳しい説明については

Dawn Patrol EP — AI音楽生成モデルとのサーフィン

ここ数年の私のAIを用いた音楽制作の試みをまとめた作品として、12インチのレコード、Dawn Patrol EPが発売になりました!以前そのリリースをアナウンスして、プレオーダーを開始し始めてから一年近くが経過した今日...ようやくレコードが手元に届きました。コロナ禍によるプレス工場の作業の遅れと予想外のレコード需要の高まり、ウクライナ情勢の悪化による原材料などのロジスティクスの問題。さらにはレコードのプレスの手配を頼んでいた仲介会社の倒産(!!)と度重なる不運に見舞われ、遅

「生成AIはビジネス・デザイン・アートをどう変えるのか?」セミナーレポート(2日目)

こんにちは、Qosmoのシバタアキラです。ここのところ生成型AI技術が飛ぶ鳥を落とす勢いで進化していますね。画像の生成においては8月末にオープンソース化されたStable Diffusionがきっかけになって、数多くのイノベーションが生まれています。私のブログでもそのへんの経緯を先日まとめさせていただき、多くの方に読んでいただきました。 また、このような進展はテキストの生成や音楽の生成などにも波及していて、特に音楽に関しては今年Qosmoから技術動向をまとめたホワイトペーパ

AIは音楽を変えるか? リアルタイムの音色合成/音響処理を可能にするAIプラグイン・プラットフォーム『Neutone』の紹介

2021年の初頭。私は、人工知能(AI)を用いた人間の創造性の拡張の可能性について説く『創るためのAI—機械と創造性のはてしない物語』を上梓しました。この本で、AIは単なる人の模倣ではなく新しいアイディアを与えてくれる存在として描かれています。中でも、自分が最も興味がある表現領域=音楽におけるAIの活用や新しい音楽の可能性について、自分でも意識しないうちに一番多くのページを割いていました。私自身もこれまでAI音楽生成を用いた音楽作品やパフォーマンスなどを実践しています。 A

「2121年 Futures In-Sight」展に寄せて

現在21_21 DESIGN SIGHTで開催中の「2121年 Futures In-Sight」展にQosmoが参加。朝日新聞社メディア研究開発センターとのコラボレーションによる新作『Imaginary Dictionary』を展示しています。この記事では、作品の制作経緯や背景について紹介します。 「2121年 Futures In-Sight」展は、「Future Compass」(未来の羅針盤)というツールをきっかけに、未来を思い描くだけでなく、現在を生きる私たちの所

Qosmo Mask 2022

Qosmoでは、2022年の新年のご挨拶として、昨年同様オリジナルのマスクをデザインしました。今年は、CLIPと画像生成モデルを使用してデザインを行いました。この記事では、そのデザインにおけるコンセプトや手法について記します。 Concept改めまして「Stay safe with an AI-generated tiger mask, Best wishes for 2022!」 2022年の干支は寅年、QosmoはAI技術を用いてタイガー・テクスチャのマスクを制作しま

AI研究と音楽表現 - テクノロジーの「誤用」をめぐって

このところ少し時間ができたこともあり、音楽の領域で新しいテクノロジー(サンプリング、シンセサイザー、ターンテーブル etc)がどのように使われてきたか、改めてその歴史を振り返っています。 音楽とテクノロジーの歴史の中で繰り返し現れるモチーフ。それは、アーティストがテクノロジーの開発者の意図からは「ズレた」使い方をすることで、新しい表現が生まれるというサイクルです。音楽テクノロジーの歴史は「誤用」の歴史である、そのことを痛感しています。 ‘The history of te

Emergent Music / 創発する音楽

※本記事はMedium掲載のBogdan Teleagaによる記事「Emergent Music」を翻訳したものです。 「誰もいない森で倒れた木は、音を立てるのか?」 アイルランドの哲学者ジョージ・バークリーによるこの問いはよく知られています。 しかし、みなさんは以下の問いについて考えたことはありますか? 「森の中や海の中で音楽が作られても、それを聴く人間がいなければ、それは音楽だろうか?」 私たちの見方や偏見が現象に反映され、まったく新しい意味を持つことがあります

今際の国のアナタ - 強化学習による行動生成エンジンを用いたゲーム開発

今回は、Netflixオリジナルシリーズ『今際の国のアリス』の公開を記念して、エナジードリンク『ZONe』とコラボレーションした、"本能"のみで操作する新感覚ブラウザゲーム『今際の国のアナタ』について、Qosmoが担当した人工知能部分を取り上げたいと思います。 まずはじめに、本ゲームの元となった『今際の国のアリス』について簡単に説明させていただきます。 『今際の国のアリス』は、 麻生羽呂さんによる漫画が原作で、2020年12月に、Netflixオリジナルシリーズ『今際の国

SIAF2020 Matrix

※本記事はMedium掲載のRobin Jungersによる記事「Building an online exhibition space」を翻訳したものです。 ※プロジェクト詳細に関しては、Qosmo公式サイトをご覧ください。 OVERVIEW 札幌国際芸術祭(略称:SIAF)は、3年に一度札幌で開催される芸術の祭典です。現代アートやメディアアートの作品を紹介するとともに、札幌の魅力を国内外に発信しています。3回目となるSIAF2020は残念ながら新型コロナウイルス感染拡大

『4D DRAWING』展に寄せて

表参道のTIERS GALLERYにて『4D DRAWING』展を開催します。本展覧会では、クリエイターの深地宏昌さんとのコラボレーションで制作した作品群を展示します。 BACKGROUND『4D DRWAING』展のテーマは「4次元」です。ここでの「4次元」は数学の研究分野であり、「4次元ユークリッド空間」のことを指します。2次元の「正方形」、3次元の「立方体」のように、4次元にも「超立方体」と呼ばれる図形があります。私たちは3次元までの世界しか見ることができず、この4次