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リスティング広告はロジックツリーで一般化できないんだよ。
インターネットの高波をサーフィンしていたら「リスティング広告をロジックツリーを使って要素分解する!」的なコンテンツを見て「は?」と思いました。
内容を見て更に「は?」と。
私は落胆しています。リスティング広告含め、デジタル広告の理解がこんなにも進んでいないんだと。もう令和ですよ。
間違った認識している人が、間違ったことを教えてるせいで、世の中に間違った理解がたくさん広がっていてとても悲しいです。
ということで、今回はリスティング広告をベースに、デジタル広告がロジックツリーで一般化・単純化できない理由をお伝えします。
リスティング広告の間違ったロジックツリー
ロジックツリーとは、様々な問題や課題、分析要素をツリー上に表現することで、原因や解決策を発見しやすくなる、課題解決のフレームワークです。
そのうえで、まず間違ったロジックツリーを紹介します。多くのコンテンツでは以下のような図で表現されていました。
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初手から間違ってます。
コンバージョンとCPAは同列じゃないだろ。
しかも「コンバージョンを増やす」ことに対し「予算・投資額を増やす」という選択肢がないのかが謎です。
他にも様々な違和感がありますが、一つ一つツッコんでいくと長くなるので、あとで説明します。
とにかく、これで十分に要素分解できるかでいえばNO!です。
とりあえず、リスティング広告の仕組みを分かっていない人が多いということはよく分かりました。
正しい?リスティング広告のロジックツリー
冒頭に述べたように、リスティング広告含め、デジタル広告はロジックツリーで単純化・一般化が難しいので、「とりあえずここまで」というレベルで正しい?リスティング広告のロジックツリーを作りました。
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まずツリーの一番上は「コンバージョン≒KPI」であるべきです。
だから初手から間違っているんです。
そして極論(実際には無理ですが)、コンバージョンを物凄く増やしたければ広告予算を1兆円にすればよいのです。
ただ潤沢に予算がないからこそ「CPAを下げよう」となるんです。
CPAを下げるのは、CVを増やすための手段
気をつけなければならないのは、CPAを下げるためにリスティング広告を実施しているわけではありません。
極論、CPAを下げたいなら配信費用を0にすれば、CV獲得にかかる費用も0にできます。
分かりやすく、具体的な数値を使って説明します。
広告予算が10万円/月、現在のCPAが1万円の場合、1ヶ月あたりのCVは10件です。
CPAが5,000円になった場合、1ヶ月あたりのCVは20件になります。
だから、CVを増やしたければCPAを下げるんです。CPAを下げるのは、CVを増やすためのプロセスの1つに過ぎないのです。
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同列なわけないですよね?
先述の通り、リスティング広告の目的はCVを増やすためです。
CPAを下げるためには「CVRを上げるか」「CPCを下げるか」
これは別のnoteでも紹介しましたが、CPAを下げるためには「CVRを上げるか」「CPCを下げるか」です。
念の為、端折りながら紹介します。
まずCPCは、以下の式のように「CPC × CLICK = 費用」と変換できます。
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次にCVRは、「CVR × CLICK = CV」と変換できます。
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最後にこれらの式を使って、CPAの式に代入・約分をすると、CPA = CPC ÷ CVRになります。
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CPCは「クリック単価」、CVRは「コンバージョン率」という言葉のせいで凝り固まってしまっているかもしれませんが、CPCは平たくいえば「いくらでサイトに来てくれたか」、CVRは「来た人がどれくらいの確率でCVしてくれたか」です。
つまりCPAを下げるということは、いかに安く誘導し、いかに高確率でCVしてもらえるかです。
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リスティング広告がロジックツリーで一般化できないワケ
正しい?ロジックツリーは正しくない
リスティング広告に精通した人は、おそらく先ほど「正しい?」としたロジックツリーにも違和感を持つと思います。
その理由はシンプルで、見方によって正しくないからです。
例えば広告費用を減らしたい時、みなさんはどうしますか?
入札金額を下げますよね?
今だと目標コンバージョン単価を下げたり、コンバージョン数の最大化を利用している場合は予算を下げると思います。
入札金額を下げるとどうなりますか?
CPAが下がりますよね?
つまり先ほどのロジックツリーで表現した「広告費用」と「CPA」には、強い結びつきがあります。
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つまりこの整理の仕方だと、それぞれの指標がツリー状に機能していないので、ロジックツリーとしては不十分です。
なぜこのような状況になるかというと、「広告費用」はビジネス側の指標に対し、「CPA」はデジタル広告側の指標だからです。
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別にこれは悪いことではなく、マーケティングの全体戦略を担っている人からすると正しいロジックツリーなのですが、予算の決定権のない運用者からすると正しくないロジックツリーとなります。
運用者にとって正しいロジックツリーは?
では運用者にとっての正しいロジックツリーを考えてみましょう。
運用者は「決められた予算でCVを最大化する」のがミッションであるため、先ほどのツリー上の「広告費用」を固定します。
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そのうえで、CVR・CPCの下にはどんな要素が考えられるでしょうか?
CPCについて考えてみましょう。
CPCはどのようなプロセスで決まるのか。それは以下の記事やこちらのホワイトペーパーでも解説されていますが、ベースはpCVR(推定CVR)です。
目標コンバージョン単価が10,000円で、pCVRが1%の場合、CPCの目安は100円になります。
以下の図は古いホワイトペーパーからの引用ですが、こちらもGoogle公式のものです。
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pCVRはリスティング広告では設定しているキーワードやユーザーの検索背景、広告やランディングページなどから決定します。
計算されたpCVR、それに基づく上限のCPC、そして検索語句との関連性、広告アセットなどから広告が表示されるか否かが決定します。
ん?あれ?CVR
って思いませんでした?
そう、Google含め今日のデジタル広告は「機械学習」を用いているため、「予測」と「結果」を循環させ続けています。
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このことを踏まえて、CVRの要素分解も踏まえつつ、ロジックツリーのような形に落とし込むと以下のような図になります。
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まずCPCを安くするためには「表示機会の改善」が必要です。これは設定しているキーワードや過去の実績、広告ランクに紐づいています。
そして広告が表示された後、クリックされるか否かは「広告の訴求内容」に関連します。
そしてユーザーがサイトに来た後は、確実にCVさせるための「LPの改善」が必要です。
この一連のプロセスが、「アカウントの実績」として蓄積され、次の循環に対して良い影響も、悪い影響も与えていきます。
様々な指標が複雑に絡み合っているため単純化できない
このように、デジタル広告は「機械学習」を用いているという性質上、ロジックツリーのように構造化して整理することが難しいのです。
先ほどのpCVRも代表的な例ですが、他にも広告ランクの算出には「推定クリック率」や「LPの利便性」など、枝分かれした一部の要素が用いられます。
また他にもロジックツリーでは分解しきれない要素があります。
それは「クリックの質」の部分です。
例えばリスティング広告から離れて、「商談の質」を評価する場合って「契約率」などの、次のステップに至った割合を用いますよね。
同じように「クリックの質」を評価する場合、クリック率を用いればいいかというと、そうではありません。
なぜならGoogleはクリック率を評価しているのではなく、そのクリック率が相対的に見てどれくらい良いか悪いかで判断しているためです。
そして一番の問題は、広告主がその相対的な評価を品質スコアの推定クリック率でしか確認できないことです。
「相対的」と「絶対的」評価があり、かつ自社でコントロールすることに限度がある「相対的」な評価が重視されているが故に、ロジックツリーに落とし込みづらいとも言えます。
で、どうすればいいのか
最後に、今回伝えたかった要点をまとめます。
リスティング広告やデジタル広告は、機械学習の仕組みを含め様々な指標が複雑に関連し、相互に作用し合っているため、「ロジックツリー」というフレームワークで構造化し、単純化することはできない。ロジックツリーに無理やり当てはめたとしても、間違った課題や仮説を導きかねない。
念の為言っておくと、ロジックツリーなどのフレームワークで、物事を一般化・単純化すること自体を否定するつもりはありません。
ただ、そのようなフレームワークを鵜呑みにするのは思考停止しているだけです。
個人的に、フレームワークは「バカでも分かるために」開発されたようなものだと思っています。別にフレームワークを使わずとも、考え抜けば物事をきちんと要素分解して分析し、仮説を立てることはできます。
で、どうすればいいのか。
感じるな、考えろ。
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