【自治領諸島の人々】雨の中観光客に対応する屋台街の店員の話

 島外の人がもってる自治領諸島のイメージといえば、晴れ渡った空! 長く広がる白い砂浜! 美しく輝く海! みたいな感じだと思う。観光ガイドブックやウェブサイトに載ってるのはそういうキラッキラな写真ばかりだし。

 もちろん、実際はいつもいつでもそんないい天気ばかりって訳じゃない。天気なんて気まぐれなもんだからね。

 二〜三日曇りや雨が続いたところで、屋台街で店をやってる私たちは、客足が伸びなさそうだなあと思う程度で済む。あまり続くと困るけど。でも、観光客にとってはある意味死活問題だ。自治領諸島の最大の売りである綺麗な日没が見られないし、海で遊ぶにしても、天気が悪くてどんよりとしてたらあんまり盛り上がれないだろうし。

 今目の前にいる観光客二人も、まさにそういう目にあったらしい。ここに辿りつく前から、小雨が降り続けている空を指差しては残念そうな顔で喋っていたから。

 聞き慣れない言葉だけど、身振り手振りを見るに「雨のせいで海で遊べないから代わりに飯を食おう」といったところか。めちゃくちゃ美味いうちの飯を海の代わり呼ばわりされているのならちょっとだけ癪だけど、まあ、気持ちは分かるよ。

 次に来た時には海や日没を思う存分堪能出来るといいね、本っ当に綺麗だから。そう思いながら、注文の品の準備に取り掛かった。

(改訂:2024/03/06)

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