【自治領諸島の人々】「拠点」を撮る写真家の話

 PCモニタ上に並ぶ、沢山の写真たち。これらは全て、私が先日「拠点」で撮影してきたものである。

 私は、この島に移住してきて以来、暇を見てはカメラを手に「拠点」に赴いている。その目的は、そこで生きる人々の姿を記録することだ。

 治安の問題から、「拠点」への住民以外の立ち入りは認められていない。『故意に立ち入った者が如何なる状況に陥っても、一切の責任を負わない』。「拠点」の統治組織であるフンダドールもそう明言している。

 興味本位で「拠点」に立ち入るべきではない。それを理解してもなお足を向けてしまうほど、私は彼らの営みに惹かれてしまっていた。

 「ヴィレッジ」の住民、いわゆる富裕層の中には、島の治安の改善や、観光都市としての価値を高めるために、「拠点」の解体を望んでいる者もいると聞く。何と傲慢な言い分なのだろう。

 島の歴史を辿ればすぐに分かることだが、「拠点」の住民たちこそがこの島の偉大な礎であり、原動力なのである。高台の上で大きな顔をしている奴らは、所詮彼らが拓いてきた土地を間借りしている余所者に過ぎないのだ。

 これからも、写真を通して「拠点」の魅力を世界に発信していきたい。それが写真家としての私の使命だと、勝手ながらそう思っている。

(改訂:2024/03/22)

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