【自治領諸島の人々】熱を出して寝込んでいる住民の話

 朝から熱を出して寝込んでる。そうメッセージを送ったあと家に来た友人がキッチンへと向かってから、しばらくの時間が経った。

 料理が出来ると聞いた覚えはなかったけど、ここまで届く音と漂う匂いからすると、なかなかに手際がいいらしい。どうやら普段から料理をしているようだ。

 友人がキッチンから顔を出した。食べられるかと聞かれて、熱で回らない頭で考える。食欲はあんまりないけど、昨日の夜から何も食べてないのを思い出したので、少しだけ食べる事にした。

 小さめの皿に入れて運ばれてきたのは、野菜たっぷりのチキンスープ。あ、パスタっぽいのも入ってる。見るからに栄養満点だ。

 友人曰く、子供の頃に体調を崩すと、決まってこのスープを出されたという。牛乳をかけたシリアルだけだった我が家とはえらい違いだ。

 スプーンですくって、ふうふうと息を吹きかけてから口に入れる。おいしい。チキンスープに野菜の風味が溶け込んでる。少し薄味にしてあるのかな。身体に優しい味、という感じ。

 残りは冷蔵庫に入れておくからあとで食べてと言って、友人はキッチンに戻った。片付けを始めたらしい。

 作ってくれてありがとう、材料費渡すね。そう友人に伝えて財布を出そうと起き上がったら、とりあえず今は体調を治せと言われた。それもそうか。空にした皿を近くに置いて、また布団に潜った。

(改訂:2024/03/11)

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