【自治領諸島の人々】厄介な住民とフンダドールの強制執行官の話

「強制執行がなんだってんだ! 俺は絶対にここから出ねえからな!」

「……はあ、こうなっては仕方ないですねえ」

 対象者に向けてやれやれと首を振り、無線機を口元に寄せます。

「それでは、よろしくお願いします」

 私がそう告げると同時に、物陰で待機していた武装部隊が一斉に飛び出しました。先程まで私と対象者とを隔てていた扉は、彼らによってものの数秒で取り外されてしまいました。

 そのままの勢いで、室内に雪崩れ込む武装部隊。怒号と悲鳴。私に対してはあんなにも威勢の良かった対象者ですが、彼等に敵うはずがありません。引き摺り出されてきた対象者の姿は、まるでボロ雑巾の様でした。

 誤解していただきたくはないのですが、我々としてもこんな乱暴な事はしたくないのです。諸々の手続きが面倒ですし。

 周辺の住民と何度もトラブルを起こした末に、暴力沙汰に及ぶ。さらに、事情聴取のための呼び出しにも期日までに応じない。そのため、懲罰的転居の強制執行に至った――という流れなのです。つまり、当人の自業自得。

 この地の治安維持は、我々フンダドールはもちろん、住民たちにも同様に課せられている責務です。それを乱す者には、こうして処罰が与えられます。ここへの移住の際に、しっかりと説明されているはずなのですけどね……

 さて、私は事務所に戻って報告書を作成する事にします。それでは、お疲れ様でした。

(改訂:2024/03/15)

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