【自治領諸島の人々】強盗の手引きをした使用人の話

 真夜中。静まり返った家の中から、男たちが音もなく出てきた。そのうちの一人に、「仕事」はどうなったかを聞く。無事に終わったという返事に、私たちは声を殺して喜びあった。やった、やった、これで私たちは自由だ! そして手を握りあい、抱き締めあった。

 私たちは、この家のやつらが嫌いだった。私たちを「拠点」生まれで学がないからと安く買い叩いて、乱暴な扱いをして、少しの事で怒鳴り散らして。成金で、見栄っ張りで、見かけにばかり金を掛けたから、私たちのような安い使用人しか雇えなかっただけのくせに。

 だから乗ってやったの。男たちの話に。私たちが男たちにこの家の情報を渡す。その情報をもとに男たちがこの家を襲って、分け前を私たちに渡す、という話に。

 今、男たちは「仕事」をやり遂げた。家から運び出された金目のものが車に積まれていく。私が知っている限りでもものすごく貯め込んでいたから、かなりの金額になるはず。分け前をもらったら何をしよう。そう考えるだけで、期待で胸が高鳴った。

 荷物の積み込みを終えた車に、男たちが乗り込んでいく。私たちも乗らなきゃ。みんなで車に駆け寄る。すると車の窓が開いて、中から銃口が、どうしてこちらを向いて、――――あ。

(改訂:2024/03/04)

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