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空欄
2024年4月13日 09:44
「ねえ、あんたも裏で怪しい客にヤバい薬とか売ってたりすんの?」 そう言ったガキの目は、好奇心で輝いていた。 最近こいつが読んだ漫画の中に、そういう場面があったらしい。治安の悪いところにある怪しい店で、違法薬物を取引する――といった、まあ、よくあるネタだ。 不躾にも程がある話だが、ここがそういう店に見える、というのは分からなくもない。立地は観光地区の外れの奥まったところ。建物は古く薄暗い
2024年4月11日 18:03
努力はいつか報われる。ずっとお守りにしてきたこの言葉を今日は持て余してしまって、ダンスのレッスンを終えた私は、なんとなく路地裏に寄り道していた。 イヤホンで課題曲を聴き、クラスで一番上手なあの子のダンスを頭の中でリピートしながら歩く。ふと気付くと、近くに猫がいた。 この路地裏には野良猫が多くいる。住んでる人みんなに可愛がられているからか、どの猫もとても人慣れしている。この猫も、私がここに
2024年4月6日 05:23
ロードバイクを適当な木陰に停め、聞こえてくる波音をたどって木々の間を進んでいく。視界が開けた瞬間に飛び込んできた、鋭くまばゆい陽光に思わず目を細めて――それが薄れた先に現れたのは、どこまでも広がる美しい海だった。 自治領諸島の東部に広がる、太古の昔に起きた噴火により形成されたと言われる溶岩台地。そのさらに東端にあるのが、この展望台だ。観光ガイドによれば、自然あふれる公園として知られる一帯の中