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ひとのコピーを座右の銘とする

「趣味なら、本気で。」というコピーがある。10年以上前だけど、渡辺謙がそう語りかけてくるカメラのCMがあった。素敵なコピーだなと思った。
比較的安いコンデジや、なんなら携帯電話のカメラで事足りる時代に、プロでもないのに一眼レフにこだわるなんて
「ただの趣味なのに?」
と言われそうなところを、先回りして
「趣味なら、本気で。」
って、根拠なく背中を押してくれるところがいいわー。と思った。
わたし自身が一眼レフを初めて買う時に迷ったこともあり、よく覚えているCMなのだが、この根拠なき強めのメッセージがポイントだと思う。なぜなら、ふつうは
「仕事なら本気で」「受験するなら本気で」「命に関わることなら本気で」というように「本気」は重く、真面目なノルマとなじみやすい。
そんな「本気」案件と真逆ですらある「趣味」という言葉の、明るくふわふわした軽やかさよ。そこに本気出そうぜ(=金出そうぜ 笑)って言い出すCM、その無責任さも清々しくて好きだ。

「本気」と「趣味」が矛盾するような書き方をしたが、よく考えてみると、趣味が必ずしも軽くお気楽なものとは限らない。
マニアとかコレクター、オタクとか推し活とか、趣味が生き方を左右している界隈(?)の人口は相当なものだろう。彼らが日本経済に大きく貢献しているのは紛れもない事実だ。

SNSで知り合った、以前の同業者でもある友人がいる。
初めて対面したとき、実際に会うまでのわたしのイメージを
「オタクですよね」
と一言でまとめられた。
たしかにSNSで仕事の話を一切せず、趣味のことばかり書いている。文体もじゃっかんオタク風味なのかもしれない。よくわからないけど。
そして、そう言われてどう感じたのかと言えば、めっちゃ恐縮したのだった。
「いやいや、わたしなんか全然……」
誉められてないのに謙遜。
そう、自分が世のオタクというか趣味人たちをわりとまじめにリスペクトしていることに、そのとき気づいた。(ジャンルにもよるけれども)

「趣味なら、本気で。」今では座右の銘である。

(※コピーライターは玉山貴康さん/2011年)


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