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物語を書くこと

こんにちは、QoiQoi吉次です。

僕は日本大学芸術学部演劇学科演技コースの卒業生で、大学で演技を専門に学んできました。
そして卒業後、団体を立ち上げ脚本を書き始めたので、脚本の基礎も学ばず独学でここ2、3年書き続けてきました。
その中で、今日は来年3月に公演する東日本大震災をテーマにした作品「SCRAP AND...?」の脚本を書く中での苦悩を書いていきたいと思います。


意味を問われる

12月21日現在脚本自体はほぼ完成しており、稽古の中で少し手直しをしながら進めていく段階へ入っています。
脚本を書き始めたのは今年の3月まで遡ります。第一稿が4月末にできた直後緊急事態宣言で、僕らは公演を延期せざるおえない状況になり、その後大幅に中身を改訂して第二稿を6月ごろに書き上げました。
そして、書き上げた脚本をもとに出演依頼をしている人や、大学の信頼がおける同期などに読んでもらいました。

「震災のことが直接的に書かれ過ぎている」
「確かによく取材して調べられてはいるけど、これを演劇でやる意味あるの?」「本を読めばいいんじゃない?」

帰ってきた感想は厳しい感想でした。
僕たちは2018年より福島へたびたび取材へいき、そこで聞いた話や見たものをもとに脚本を書きました。
脚本を分析すると、僕の書いた本はどうやら読み手からすると直接的すぎるようでした。


物語を欲する

東日本大地震をテーマにした演劇作品をやる時に観客が欲するものは事実(ジャーナリズム)ではなく物語(フィクション)ではないか? という仮定が自分の中で生まれました。
それは岸田國士戯曲賞を受賞した『福島三部作』からもうかがえます。賞をとった中で「この作品は非常に記録としてとても優れた一面を持ってる反面、演劇として見た時の評価の是非を考えるべきだ」という議論も巻き起こったそうです。
つまり、震災だけでなく社会問題を考える時に一度その問題単体を見るのではなく、抽象化させ距離を取ることによって、一つの物語として語る際に誰しもがその問題を考えることができるし、語り継ぐことができるようになるのかなと思いました。
少し難しいですよね、、、
ようはテーマやモチーフとなる題材と作品に距離があったほうがより観やすくなるものになるのでは? ということです。


被災地は現在進行形である

作品の距離を考える中で自分の中で一つの違和感が浮かび上がってきました。

距離感を描きづらい。

何度も原稿を書き直していく中で、もちろん創作をする部分はありますが、なぜかチープになってしまうのです。絵空事に見えるというか、危機感が足りないというか、これは現地を見てきたからこそ感じるのかもしれません。
現地や自分の見てきた景色を見ながら舞台上にどんな景色を立ち上げようか考えているときに、ふと気づいたことがあります。

現地は現在進行形で被災地としてあり続けている。

普段東京に住んでいる僕たちは震災が9年前の【過去】になりつつあるのではないでしょうか?
だからこそ、震災を考えるときに過去として距離を取り物語を見たくなってしまう。
しかし、僕らが取材した場所は【今】も放射能の被害で立ち入り禁止になっていたり、津波で家が流され故郷に帰れなくなっている人がいます。
彼らにあるのは、距離をとって「あんな事件があったな〜」「忘れないように語り続けなければいけない」という【過去】ではなく、まだ帰れない現状がある【今】なのです。
僕はそんな【今】を描き、震災が【過去】となっている人が、違った視点で何かを感じられる作品を作りたいと思いました。実際問題、福島第一原発は現在廃炉へ向かって作業を続けていますが、日本国内にはまだ稼働している原発もあるし、廃炉や再稼働に向けて議論が繰り広げられている原発もあります。まだ、終わっていない問題でもあるのです。


それでも物語にはなる。

僕らがどんなに取材してきた事をそのままお芝居にしても、台詞の順番やピックアップした話の内容は僕の主観でしかありません。どれだけ精巧に現地を状況をそのまま描いても演劇になってる時点でそれは作品であり物語(フィクション)であるのです。
次のお芝居は僕が見てきた景色、光景、話を全て詰め込み見ている人をパンクさせるぐらいの情報量が詰まった作品になると思います。
普段なら作品を作る上で作品の距離感(余白)を計算しながら制作するのですが、今回は余白などなく溢れんばかりに詰め込んでみたので、ぜひ多くの人に見てもらいたいです。

今回は話があっちに行ったりこっちに行ったりと、読みにくい文章になってしまいましたが、お芝居を見るときの距離感なども考えながら見ると楽しく見れるよ! という話でした!
ぜひ劇場に足を運んでくれると嬉しいです!


QoiQoi吉次匠生



「Scrap and…?」公演情報

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QoiQoiでは来年3月10日~14日(9日にプレビュー公演アリ)に新作公演「Scrap and…?」を上演します!
コロナの感染拡大によって延期をしておりましたが、その期間に更に取材やリサーチを重ねクオリティーを高めていますので、ぜひこの機会にご覧ください。
コロナ対策も万全にしてご来場をお待ちしています。(ご予約はこちら↓)



QoiQoiプロフィール

2018年2月9日に大橋悠太と吉次匠生によって結成されたアートユニット。 当初はano(アノ)として活動していたが、2020年10月1日より団体名を改めQoiQoi(コイコイ)として新たな活動を始めている。
また、「想像力を創造する」を信念に演劇、映像、インスタレーションなどさざまな分野を飛び越え作品制作を行う。団体名のQoiQoiもquality of imaginationが由来である。 また、社会問題から個人の体験まで幅広い事象を可視化し、常に観客に「当事者性」を提示する作品作りが特徴である。


このnoteでは作品制作のことを中心に、被災地のことや原発のこと、その他考えたことなど、読んでくれている方へなるべく為になるような記事や僕らをより知っていただける記事を書いていくことを目指しています。
もしも気に入った記事や活動の参考にして頂けたら、スキやQoiQoiをフォローをしてもらえたら嬉しいです。
また、僕たちの活動を応援・サポートしてくれる方を募集しています。
サポートして頂いた資金は現地取材や稽古など全て作品作りに使用させていただきます。
今後とも我々QoiQoi(コイコイ)をよろしくお願いいたします。

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