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Vol.2 舞台「ここに残るもの」を終えて

QoiQoi大橋悠太です。
今回は前回に引き続き舞台の創作過程のお話を振り返っていきます!

本読みの話

今回のお話は短編として書き上げたもので、上演時間も1時間未満の想定でしたので正直稽古初日の本読みはどうしたものかと思っていました。笑
もちろん自己紹介や衣装の採寸などやることはあったのですが、今回出演いただいた星さん、光子さんが戯曲に対してどんな感想を抱いているのかも分からなかったので、QoiQoi二人は緊張しながら現場入りしました。しかもzoom以外で光子さんに会うのはQoiQoi二人とも初!(演劇の稽古は初日が一番しんどいです。個人の感想ですが)
しかしそんな杞憂はすぐに解消され、稽古場に集まり挨拶を交わすと光子さんも、星さんも非常に柔らかい空気を作ってくださり終始和やかに本読みに入っていくことができました。

そして最初の本読み。
大橋がト書きを読み、次に吉次演じる『与人』のセリフ。
そしていよいよ出演のお二人のセリフが近づきます。

これまでは自分達の頭の中でしゃべっていた登場人物たちの言葉が、役者さんの肉体を通して発せられる瞬間です。

光子さんの『聡子』のセリフ、星さんの『愛生』のセリフと続いていき、聞き始めてからしばらくして「めっちゃいい!!」と心の中で叫んでいました。
しかし、演出という立場で本読み中にニヤニヤ気持ち悪い顔を晒しているわけにもいかないと思い、努めて冷静にト書きを読んでいましたが、正直心では飛び跳ねていました!

そして本読みを終え、休憩を挟んで衣装の採寸。
次の稽古の諸連絡を済ませ、第一回の稽古が終わった帰り道。
QoiQoi二人の感想は「この芝居、勝った!!!」でした。
どう考えても今までにない厚みが芝居に加わり、稽古を重ねるまでもなく良くなることを確信しました。
今までどうしても交友関係の乏しいQoiQoiは同世代の俳優たちと作っていました。同世代の俳優たちの演技の良い悪いでは決してなく、若いフレッシュさや僕らと同じ世代で作るからこそ伝わる想いやメッセージがあるのは事実です。
しかしそれ以上に、経験を重ねた役者がもつ存在感はやはり今までに感じたことがない印象を僕らのクリエーションに加えてくれました。

そんな解釈あったの!?

そこから稽古を重ねていくうちに驚いたのは、QoiQoi二人が想定していなかった読み方、意味の解釈が参加頂いたお二人の中からどんどん出てきたことです。
例えば光子さんの「聡子って母という存在として今まで生きてきた人だけれど、この話を通してもう一度この先の自分の人生を選択し直す人なんですね?」という話。それを聞いた時僕らは震えました。

そんなつもりで全く書いていなかったからです!
でも確かにそういう風に読むことができるし、何よりそうした解釈の方が自分達が創作した人物像に更なる厚みが出て見えてくるのです。
そして『聡子』という人物の見え方が変わると、他の人物たちも見え方も感じ方も変わっていきました。
これまで母である『聡子』と町役場の職員として働く次男『愛生』は共に故郷に残り、違いはあれども同じような想いを持っているように見えていたところが、実は母は今まさに新たな人生を始めようとしており、それを母の言葉で知った時に『愛生』にとってのセリフの響き方がまるで違って聞こえてくるようになったのです。

そのためそれまでの稽古では支障なく演技できていたシーンが、反対に全く演じることができなくなったり、別のシーンでのやり取りが変わって行ったりと、稽古を重ねるたびに違う側面や解釈が見え非常にスリリングな稽古になっていきました。
そして無数に枝分かれしていく解釈を取捨選択しながら一本の作品として道筋を定めていくのは演出として難しい点でもありました。しかし一緒になって真剣に星さんも光子さんも悩んでくれるので、助けて頂きながら舞台本番を迎えることが出来た訳ですが、最終的に立ち上がった舞台は、自分達が最初に書いた戯曲とセリフとしてはあまり変わらないけれど、非常に良い意味で全く違う印象の舞台になっていました!

当初、変えることのできない過去や、どうしようも無い事もあるけれど「最後は家族笑ってハッピーエンド」を想定していたお話は、「全てがハッピーという訳じゃないけれど、ここから新たにそれぞれの人生を歩み始める家族のお別れと始まりの話」に僕こと演出:大橋悠太の中では落ち着きました。
もちろん本番を観られた方の中に生まれた感想一つ一つがどれも正しいと思いますので、これを読んで「ああそれが正しい見方だったのか」などど思う必要は全くありません!

ただ稽古前と本番後を通してここまで印象が変わった芝居は、外部の公演を含めても初めてだったので、非常に楽しみながら創作をすることができ、出演頂いたお二人には感謝しかありません。
なおかつ、お二人によって完成させてもらった作品だなと心から思います。

そんな今作、実は配信で観れるらしいぞ!

さてそんな舞台「ここに残るもの」実は配信が決定しております!
ここまで書いてきた創作過程を経て、実際どんな作品として上演されたのか。ぜひ皆さんに観て頂きたい!
今回はMedia工房さんに撮影・編集をいただき、非常にクオリティの高い映像として皆様にお届けできますのでぜひご期待下さい。

HPにてお知らせと、「ここに残るもの」の舞台写真も公開しておりますのでぜひこちらもご覧下さい。

チケットの購入はこちらから!!

QoiQoiHPやTwitterで今後も告知させていただくのでチェックもお願い致します!
配信期間中にも定期的にこうした創作過程や衣装、美術、音楽、照明などについて裏話を含めつつ振り返っていきたいと思いますので、またnote.もご覧いただけたら幸いです。

ではまた!

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