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生活者見立て通信 編集部こぼれ話~#001 失われたオフタイムの「自分主権」を取り戻す~

QOのプランナーがマーケティングに関わる方にお届けしている「生活者見立て通信」。

 本連載は、生活者見立て通信編集部が、執筆に関わったプランナーへのインタビューを通じてこぼれ話を掘り下げる企画です。どのようにテーマを選び、見立てを練り上げたのか。どんな苦労や学びがあったのか―――レポートでは納めきれなかった裏話をざっくばらんに伺います。 

第一回のテーマは「失われたオフタイムの『自分主権』を取り戻す」。今回執筆した土師さん、寺西さんのお二人がインタビューに応えてくれました。

📝生活者見立て通信#001_抜粋版資料(PDF)
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「意識低い系ウェルビーイング」な私たちにピンときた言葉の数々


――今回、なぜこのテーマに目をつけたんですか。

土師:最近のトレンドにウェルビーイングがありますよね。「でも、なんか私は頑張れないんだよな〜」という感覚があって。きちんと毎食食事管理とかはできないけど、ちょっとでも糖質の低いアイスを食べる私みたいな「意識低い系ウェルビーイング」に共感する人っているんじゃないかなと思ったんです。

そんな仮説もありつつ、最初のブレストに向けて情報収集をしていた時にファッション誌の『SPUR(シュプール)』でブレイディみかこさんが書いた「ベッドで腐ることのススメ」というコラムを見つけました。記事中の1日のほとんどをベッドの上で過ごす「ベッド・ロッティング(Bed Rotting)」が気になって、日英それぞれで検索を続けていたら、芋づる式に「ゴブリンモード(Goblin mode)」や「#solodate(ソロデート)」などの言葉を見つけて。「これ、私じゃん!」と(笑)。

まずは、いくつかの記事だけをピックアップして、寺西さんとのブレストに持ち込みました。「私、すごい意識低い系なんですよね(笑)」とかいいながら、楽しく雑談して。

イメージ写真(出典:PhotoACponta1414が撮影した写真)

寺西:土師さんが集めてきた事例の引き出しが本当にいっぱいあって。私自身も意識低い系ウェルビーイングにはすごい納得するし、共感できる事例ばかりだったので、テーマ自体はすんなり決まった気がします。ブレストでは、私も知っている関連しそうな情報を共有しながら話を広げていきました。最初はたしかゴブリンモードからはじまって、そのあと話が広がった中でいいなと思ったのは「オックスフォードのトレンドになった言葉は、1年遅れで日本に来る」みたいな話ですね。


――「1年遅れで日本で流行る」というのは、お二人の感覚としてということ?

土師:そうですね。ファッションなんかのトレンドも日本のマーケットに落ちるのは1〜2年遅れぐらい。少し日本まで届くのが遅いんだなという体感値が個人的にあります。

ちょうどイギリスで「ゴブリンモード」が流行ったのは、コロナの緊急事態宣言が終わってみんなが外に出だした時期で、イギリスでコロナが解禁されたのはちょうど1年前ぐらいだったんですよね。日本は割と長いあいだ自粛モードだったんで、多分日本もそろそろこういうモードになるんじゃないかなという話をしました。


一番のインサイトは「みんな一人時間で自分のペースを取り戻したい」


――活発にブレストされたんだと思いますが、最終的にどのように見立てを絞り込んでいったんでしょうか。

土師:私の中では寺西さんが話してくれた「日本人って、暇になってるのに忙しいよね」っていう話が最初からピンときていて。たしかオープンワークの調査で「働く時間が短くなっている」データとかもいくつかセットで出してくれていて。私は割と「もうこの筋で行こう!」って思ってました。

寺西:私も同じ印象で、他のテーマと比較して迷うというよりは「もうこれいけそうだね!」と自然に絞られていった感じ。客観的なエビデンスとなる定量的データと、事例や自分の肌感からの定性的なトレンド感覚の両方が揃っていて、しっかりストーリーが作れそうだなと思ったのは覚えてます。
核となるデータは何個か決まっていて、余談も含めてブレストが広がる中で「実はこれも使えそう」「これはいらないよね」と取捨選択されていった感じです。

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寺西:
ただ、当初は見立ての部分が盛りだくさんになってしまった反省があります。編集部との中間共有でも、そんな指摘をもらいました。「とにかくシンプルにする」のが大事っていうのは、今回すごく学んだところですね。浅く広くじゃなくて、シンプルにして深くするのがポイント。


――広げていった話から、「これだ!」と決めた時の突破口って何かありましたか?

土師:色々とフィードバックをもらって、「結局何が1番のペインなんだろう」と考えた時に、「みんな自分のペースで生きられてない」っていうのがすごい「負」なんじゃないかっていう話になって。で、そこを立たせる形に変えていきました。最初はいろんなことを見立てとして箇条書きに並べていたけど、そうじゃなくて「現代人って暇なのに忙しいよね、だからみんな1人の時間で自分のペース取り戻したいんだよね」と。それだけに絞ったのが、結構突破口になった気がします。それに合わせて、事例も必要なものだけに削っていきました。


情報同士をかけ合わせて発想し、人物像や本質的なニーズを想像すること


――最後に、鋭い見立てを作るために心がけていることを教えてください。

寺西:日々ちゃんとインプットしておくことが必要なのは大前提ですが、 すでに公になっている情報そのままでは新しさはないので、情報同士を組み合わせたり繋げたり、そういう掛け合わせる発想が大事だなと思います。

土師:世の中の事象を自分ごと化するのと同時に、バイアスを取り除くのも大事だと思っていて。この2つを両立させることは、すごい意識してやってますね。自分は興味がなかったとしても「こういうのにハマってる人ってどういう人なんだろうな」と想像して、「たくさん事例があるけど、結局生活者に何が求められてるんだろう」みたいなところまで深掘ってうまく想像できた時は、いい見立てができる気がします。

逆に、どうにもこうにも考えても全然わかんない。でもすごい流行ってるんだけどなみたいな時は、もうちょっとバイアスを捨てたり、解像度高く、人や本質的なニーズをこう想像する ことにフォーカスするのも大事なのかなって思いました。


【生活者見立て通信とは】

QOのプランナーが、定期発行しているレポート「生活者見立て通信」では、世の中の流行やトレンドに関する具体的な「事例・事象」を数多く紹介し、背景にあるインサイトについて独自の視点で「見立て」て、日々のマーケティング活動に活かす「ツボ」を提案しています。

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*担当者:土師 ゆきの(Yukino Haze)、寺西 成美(Narumi Teranishi)


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