首相の任命権とは

日本学術会議の105人の会員のうち6人の任命を拒否した菅首相のふるまいが批判を浴びていますが、その一方で,彼のとった処置を妥当だと主張するひともいます。

そんなひとりがnote で書いている「『推薦に基づいて任命』について司法試験法と労働組合法から考える 」という記事をある人が紹介しているので読んでみました。

https://note.com/nathankirinoha/n/n78bc3ee86340

まず司法試験法が例に引かれています。
司法試験を受けるのは、司法官志望者です。法務省直属の役人です。それをその省の長である法務大臣が任命するのさえ、司法試験考査にあたる委員会の推薦に基づかなければできないのです。それがどうして、推薦された者を任命拒否できるという主張の根拠になるのかわかりません。

労働組合も都道府県労働委員会も同様です。

それを、この筆者は「その任命は任命権者である内閣総理大臣の広範な裁量に委ねられており」などとつなげてしまうのですが、広範な裁量などとは法令のどこにもなく、このひとが勝手に尾ひれをつけているだけです。

日本学術会議ってなあに?

ここで、日本学術会議というものができた沿革を考えなければなりません。これは戦後にできた機関で、先の大戦に学者たちが協力したことへの反省を踏まえ、政府からは独立性をもち、軍事には協力しないことを基本方針として設置されているのです。
軍事化に向けて進んでいく政府、憲法を無視する政府に対して批判的な学者は,日本学術会議会員として正統派です。

菅首相はそういう学者たちを任命拒否したのです。

白を黒と・・・

以下、記事はこんなふうに続きます。

<都道府県知事に関しては、・・・「推薦は、被告の任命行為を拘束する性質をもつとしなければならない。」>

ということは、菅首相は推薦によって拘束されるのです。

続けて、労働組合法のことにふれている部分も、今回の学術会議とは関わりのない話です。退屈だろうから引用して批評するのはやめます。

ただし、

<「労働組合の推薦した候補者が、正当な事由がないのにこの対象から除外され、又はこれと同視しうる扱いを受けたときには、その任命手続は違法である」>
とあるのは、語るに落ちたといいましょうか。まさに菅首相そのものじゃありませんか。これじゃ、菅首相の任命拒否はまったく立つ瀬がありません。

この記事の筆者は、まるで、白いハトを見ながら、カラスというのは黒いものです、この鳥は黒いですね、だからカラスですよ、と言っているようなものです。

菅首相とはそんなひと

<「推薦は、指名とは異なるから、推薦に基づいて任命する場合の任命権者には、裁量権が与えられており、推薦された者が審査の対象とされた以上、推薦された候補者が労働者委員に任命されなかつたからといつて、直ちに裁量権の濫用があつたとするわけにはいかない。」>
 
任命されなかったからといって、直ちに裁量権の濫用とは言えない? それなら任命権の濫用でないことを、菅首相は説明すべきです。

菅首相は記者たちに何と答えました?「法に基づいて適正に行った」と言っているだけです。

記者たちが聞いているのは、首相の決定が法にもとづいているか、適正か、もしそう言うならなぜなのかということで、それに対してこれでは答えにはなっていません。菅というひとは安倍政権の官房長官であった7年間つねにこうだったではないですか。そしてそれがいま政権の座についている。これを独裁者というのです。


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