【日記】印刷して葬り去る

 保坂和志が、小島信夫の『寓話』を個人出版した時だったか、他の機会だったか忘れたが、書かれたものを本としてまとめるという行為は、どこか、亡くなった人を葬る儀式とか、思い出を焼くといった行為に似ている、という話をしていて、そんなにいいものではないかもしれないが、自分も去年の日記を一つの本の形に製本してまとめる、ということを先ほど完遂して、なんとなく、去年という未知の塊が、ちゃんと形をもって骨壺のようなものに収まり、生き生きとしない、いつでもどの時間でも参照可能なアーカイヴと化したという感じがしている。
 今、あえて両義的な書き方をしたのだが、じっさいこれによって起こることは、いいとも悪いとも言えないような気がする。なんとなく、過去にいいものを書いたような幻想を捨てることはできるかもしれない。最終的には肯定されるべきことなのだろう。あまり楽しいばかりでもなかった。
 製本所にデータを送って、数週間の配送待ちになる。二段組みにして、250ページになった。

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