【読書録】吉村萬壱『哲学の蠅』2

 中盤に差し掛かって、俄然面白くなってきた。題名の「哲学の蠅」の意味も明かされた。というか、吉村萬壱はバリバリ哲学に浸っており、ちょっとずつ齧っている、などと言っているがぜんぜんそうは思えない。いや、哲学の全体という、とても踏破しきれそうもない荒野の存在を、少しでも感じたからこそ、そういう言い方をするのかもしれない。前半ほどは、変態だとか、虐待だとか、目を封じたくなるようなことは、なくはないが、少し鳴りを潜めた。
 なぜ、前半に母親の虐待とか、書いていたのかも、何となくわかった。人生のどの場面にも、陰に陽に、どうしても母親という存在の影が、ちらつくので、それを離れて形而上的に哲学だとかいうのは、違うと思ったのだろう。

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