【日記】文字

 僕は、フェチ的なものかもしれないが、文字だらけのものを見ると、とてもドキドキする。小説家で、確かケルアックだかが、一枚の巻紙にびっしり文字を書いていたとか、あるいはアウグスティヌスがものすごい量、ものすごいスピードで原稿を書いてたとか、カフカがそうであるとか、エピソードだけでもいい、原稿なんかを見ると、異様なことが起きているというのが、原語がわからないながらにわかって、そういうのがとてもいい。
 そういうのにあこがれて、自分も、どちらかといえば大量に書かれたものがあって、しかし意味は希薄だったり、あまりなかったり、ねじれているというようなものを書く節がある。
 ヴォイニッチ手稿なんか、言語すら読みうるものではないので、かなりワクワクしたものだが、後から、少し嘘臭いと思うようになって、熱が冷めた。
 アドルフ・ヴェルフリという、アウトサイダーアートの人がいて、基本的にはものすごく病的で緻密な絵で有名になった人だが、展示で見てみたら文章も面白かった。造語と、普通の言葉とを往復するような、音的繰り返しが多く、また、やはり意味の分からない、桁がどんどん大きくなる数字が、謎の単位とともに書き添えられていたりした。意味を置いていくような、人の熱狂とともにある文字というものに、どこか惹かれるのかもしれない。

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