「美しい鮨」について
前置き
先日、急ピッチで仕上げたスピッツのオマージュ曲ですが、自分としても思いのほか良いできだったので、なんとなく書き連ねます。
まず、前提として、もともとワタシはスピッツが大好きです。今まで作った曲にも「スピッツっぽい」とコメントが入ったこともあり、多大なる影響を受けていると自分でも思います。
どこが好きかというと、一番は歌詞だと思います。あの世界観は他にはない。具体と抽象の狭間に置かれた言葉が、ワタシの心にさざ波を立てるのです。「放浪カモメはどこまでも」の「パジャマのままで受け止めておくれ」なんて歌詞はたまんない。
あとは、一見ストレートに見えて、たまに工夫を凝らしてくるコード進行や拍子でしょうか。「オーロラになれなかった人のために」に収録されてる「田舎の生活」なんかはAメロが9拍子だったり。それこそ「美しい鰭」も変拍子突っ込んでます。
オマージュ方針
オマージュするにあたっては、寄せれるだけ寄せようと努力しました。
・歌詞は想像の広がりを持たせられるように頑張る。
・コードは90%キレイなカデンツを意識する。
・アレンジは流れるようなアルペジオをいれる。
・シンプルでもメロディアスなギターソロをいれる。
・ベースは割と動かす。
・できるだけ歌い方も似せてもらう。
歌詞について
<歌詞>
1A-1
推したら日々がはずんだ
ジャングルジムものぼれる
モノクロの中の猿が
やたら胸たたいた
1A-2
見えない羽は軽いな
知らない町に降り立つ
駅地下のゆるいライト
僕を照らしてよ
1B
いつか君と美しい鮨を食べるため
1Ch
そして手をつなご 馬鹿になろ
まだ好きなネタも知らない
頭抱えた夜も
ついに会えたなら やはり馬鹿になろーよ
つま先から頭まで 君に感謝します
ところで何が好き?
<解説>
1A-1はストーリィの始まりなので、状況を説明したいなと思いました。今回のお話は、「妄想彼女」です。主人公の男子は誰かを好きになってるんですね。これはクラスメイトかもしれないし、ネット上の何かかもしれないし、モノかもしれない。
小説の世界でよく言われる話に、「直接的な言葉を使わずにいかに説明するかが腕の見せ所」というものがあります。
ここは、「好きになった」じゃなくて「推したら日々がはずんだ」としました。「胸がはずむ」でもいいんですけどダイレクトすぎる。
気持ちが高ぶってる様子を表したくて、小学生男子のように、興奮のあまり走り回ったりする雰囲気で「ジャングルジムものぼれる」としてみました。
さらに、ダメ押しで興奮感を出すため、キングコングがビルにのぼって雄たけびを上げるようなハイであると強調したく「モノクロの中の猿」=キングコングが「やたら胸たたいた」としました。
ワタシの場合、こんな感じで、自分の中には一貫したストーリィがある上で歌詞を考えていきます。しかしながら、表現を曖昧にすることで、いろんな読み取り方ができるようになります。
人によっては「モノクロの中の猿」という部分で性的な要素を受け取るかもしれないですよね。そういうのをあえてやってるつもりなんですが、成功してるかどうかは、感想を聞いたことないのでわかんないです笑
1A-2では物語が動きます。主人公は「妄想彼女」のための行動を実行します。平たく言えば「ストーキング」です。というわけで、ワタシが想定していた彼の推しは実在の人です。イメージとしてはライブ配信者。住んでる場所か職場を特定して会いに行こうとしてるわけです。
「見えない羽」というのは「切符」のつもり。それで、「妄想彼女」のいる最寄り駅「知らない町」の地下ホームに着いたと。誇らしい気分になってるので、主役のように「僕を照らしてよ」とご機嫌。
1Bでタイトルコール。鮨が好きということは本人談とかプロフィール上でわかってる。
1Chでは妄想爆発。手をつないでデートして、「馬鹿になろ」というのは文字通りバカップルじみた行動をとるともとれるし、「性交する」というふうにもとれるようにしたつもり。
実際はまだ「鮨好き」という大枠のことしか知らないし、配信上のにこやかな顔しか知らないので、「好きなネタ」や「頭抱えた」ような一面も知らない。だから、知りたい。
実際会えたら、やっぱり手をつないで、色々したいなあと。「つま先から頭まで君に感謝します」というのは、文字通り受け止めると、君の全身全霊が存在していることにありがとうと言いたい、という感じですが、裏の意味として「体全体にキス(感謝)をして回る」というのを意識しています。どの小説か忘れましたが(たぶん「ノルウェイの森」村上春樹著)、そういう描写があったので、なんとなく思い出したのです。
しかし、とりあえず、まずは何のネタが好きなのか? というところから知り合っていきたいなぁと。
ワタシが歌詞にこめたのはこんな変態ストーリィでした! なぜって? スピッツは変態だから!笑
コードについて
<コード進行>
intro
|A|C#m7|F#m7|G E|
|A|C#m7|F#m7|G E|
1A
|A|Bm7|E|A|D|A|G|A|
|A|Bm7|E|A|D E|C#m7 F#m7|Bm7 E|A|
1B
|D|C#m7 F#m7|Bm7 E|A|G|
1Ch
|C|Em|Am|Em|F|C Am|Bb|G G/F|
|C|Em|Am|Gm7 C7|F|C Am|F Fm7|C |F Fm7|C|
<解説>
イントロはkey-Aで
Ⅰ-Ⅲm-Ⅵm-Ⅶb・Ⅴ
ロックにおいて、Ⅶbは比較的よく使われるノンダイアトニックコード。
この四小節はⅠ-Ⅴのカデンツを違う形で2回繰り返しています。
1A-1は、同じくkey-Aで
Ⅰ-Ⅱm-Ⅴ-Ⅰ-Ⅳ-Ⅰ-Ⅶb-Ⅰ
ツーファイブワンの四小節に、Ⅳ-Ⅰのカデンツ。最後はⅦb-Ⅰ。ⅦbはV7と音が近いのでV的に使っています。
2A-1は1A-1の変形。
前半四小節は同じで、後半の四小節を変えてます。
Ⅳ・Ⅴ-Ⅲm・Ⅵm-Ⅱm・Ⅴ-Ⅰ
イメージとしてはⅣ-Ⅴ-Ⅰのカデンツの後、ツーファイブワン。
1Bは、先ほどの四小節の変形。ⅣからⅤに行かずに、間を作ります。
Ⅳ-Ⅲm・Ⅵm-Ⅱm・Ⅴ-Ⅰ-Ⅶb(Ⅴ key-C)
最後に今までⅦbとして使ってきたコードを、key-CのドミナントⅤとしてピボット。
ここでの転調をある程度スムーズにしたかったので、その手前まででⅦbの音を何回か入れて、聞き手の耳になじませてきたつもりです。
1Chはkey-Cになり、
Ⅰ-Ⅲm-Ⅵm-Ⅲm-Ⅳ-Ⅰ・Ⅵm-Ⅶb-Ⅴ
ここでもⅦbを入れて特徴づけ。
次の8小節では四小節目にⅤmを入れて雰囲気を変えました。
最後はⅣ-Ⅳmの割とよくある進行。Ⅳmはパラレルキーからの借用とよく呼ばれています。
Ⅰ-Ⅲm-Ⅵm-Ⅴm・Ⅰ
Ⅳ-Ⅰ・Ⅵm-Ⅳ・Ⅳm-Ⅰ-Ⅳ・Ⅳm-Ⅰ
小豆沢としては、シンプルにまとめたコード進行です。ポイントはⅦbと短三度上への転調。
一応、楽典的な説明をしてみましたが、ワタシは普段あまり意識してません。もともと我々は西洋音楽体系に飲み込まれて生活してるので、何も考えずとも自然に感じるコード進行がわかるのです(そういうことを調べた研究もあります)。
いつもは単純に「ストレートじゃない進行をどうにか気持ちよく聞かせてやろう」と考えながらやってます。
なので、ワタシも何も考えずギターをかき鳴らすと、ありがちで美しいと感じる進行になります。
それをそのまま使ったあと、どこかでフックポイントを作る(今回だとⅦbと転調)という作り方でやりました。
おそらくこういう形が一番良いと思います。
伝統にのっとりながら、少しだけ反抗していく。
いつか、そんな感じのツイートをしました。よく考えれば、この曲こそ、それを意識して作った最初の作品です。
最近、バンドスタイルで別の曲も出してますが、これは大分前に作った曲なので、結構こねくり回してます。
「かるぼなーら」
うわ! 長くなったから終わります! 唐突!
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