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1003「ディズニーの失くし物とブランド」

他の原稿を書いていたのでさぼっていたが、他の原稿をちゃんと書いたので書く。

タンザニアから帰ってきて一週間後に、家族でディズニーリゾートに行くことになっていたので行ってきた。我が家はそこそこのディズニー好きで、なんせアメリカ在住だったので、フロリダのディズニーワールドにも毎年行っていたようなところではあったのだが、今回はコロナに入る前の2019年ぶりの東京のディズニーリゾートだ。

物理的に日本に1年くらいいて、技術を入口にしたコンサルティングっぽい仕事をしていると、そこからわりと地続きに、企業価値とかブランドの話にもなってくることがあって、ブランドというものについて考えることが多い。というか、前からそういう仕事はしていたので普通に考えていたのだけど、意匠的な意味だけではないブランドの力、みたいのはサービスつくったりしてると比較的近いトピックになってくる。

で、2日間かけてディズニーシーとディズニーランドをハシゴしたのだけど、初日のディズニーシーで、次男が大事にしていた帽子を失くしてしまった。というのに、近くのホテルに戻ってから気づいた。

ただ、そのとき普通ならいろんなところを探し回ったり電話をかけまくったりするわけなのだけど、今回の場合、紛失したのがディズニーシー内であることがはっきりしていたので、「ああ、これは明日問い合わせればきっと見つかるだろう」と思って、あんまり不安にならず夜を過ごすことができた。

ディズニーランド内における失くし物の見つかる率というのは、針とかのどんな小さいものでも見つかるという都市伝説もあるくらい高いとされているし、過去、自分たちも何か紛失して見つかったことが何回かある。おまけに、長男が迷子になって見つかったこともある。

実際、ディズニーリゾート内の遺失物データベースの仕組みとか、連絡系統とかって、相当にしっかりしつつ柔軟なシステムで動いているはずで、遺失物のタギングや発見場所のプロッティングとか、めっちゃしっかり管理しているんだろうなあと想像する。

で、翌朝、遺失物センターに行ったら帽子の特徴をちょっと言っただけでその場で帽子が預かられていて回収できた。

この、「物失くしても絶対に還ってくる」安心感っていうのは、長年のそういうオペレーションによって培われたもので、まさに「ブランド」だよなあと思った。ディズニー以外で物を失くしていたら、とてもではないけどこんな安心感はない。これは、任天堂のハードウェアの修理とかにも似たようなものを感じる。ブランドというのは、意匠以上に、こういうオペレーションや仕組みと密接な関係にあったりする。

それはそれで良いとして、今回久しぶりにディズニーリゾートに行って驚いたのが、いわゆるファストパスの廃止(ファストパスの説明はここではしない)と、それに代わる「ディズニー・プレミアアクセス」の登場だ。この「プレミアアクセス」、平たく言えば一人¥2,000払えば列に並ばなくても良いよ、という仕組みだ。

https://www.tokyodisneyresort.jp/tdl/guide/disneypremieraccess.html

そういう仕組みは海外のユニバーサルスタジオとかにも存在するし新しいものではないが、ディズニーというブランドが、札束で行列スキップするような施策をやるのか・・・? と、ちょっと眉をひそめてしまった。

もちろんディズニーとて、一皮むけば思いっきり資本主義なわけだし、アメリカのディズニーランドなんて格差そのものみたいな世界だから、別に不自然ではないのかもしれないが、それを全面に出さないで、やってくる人たちを形だけでも平等に扱う感じ、というのもまたディズニーランドのブランドだったんじゃないかなあ、と思ったが、¥2,000で裏口から入れますよ、というようなえぐいセリフを直接ディズニーの口から聴きたくなかった感じもした。

ちょうど話題になっていたミラコスタの炎上の件なんかもそうなんだけど、ディズニーのそのへんの文学的なブランドマネジメントのゆるみ、みたいのを同時に感じてしまったりもした。失くし物はそれでもすぐに見つかるのですごいけど。


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