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0701「かつてのアメリカ」

日中、ミーティングをやってから、家族が日本に帰る前に、次男のアメリカのパスポートを更新する必要があって、マンハッタンの下の方のパスポートセンターに来た。アメリカの子供用パスポートは期限が5年なので、生まれてすぐに取得したやつがもう更新のタイミングなのだ。そういう人は多いらしく、さらにちょうど幼稚園が終わって夏休みになったタイミングなので、なんか、やたら5歳児っぽい子がたくさんいて混んでいた。

改めて見ると、人種の坩堝というもので、うちの子も含めていろんなところから来たいろんな人種の方々がいて、しかもここはアメリカのパスポートを申請する場所だからみんなアメリカ人か、アメリカ人の親なわけで、すごいなと思う。みんなアメリカ人として平等に扱われる。日本に行くと、本当に日本人しかいない。

ところがこの国では、こういう公的機関以外の場所では、あるいは公的機関においてですら、そこそこあからさまな人種的な「仕分け」が生まれてしまうことがある。

ニューヨークには、「低所得者集合住宅」通称「プロジェクト」というものがあって、文字通り低所得者が集まっている建物がちょこちょこある。そして、「あそこはプロジェクトだから近づいちゃダメよ」なんて忌避される程度には、ガラの悪い場所として認知されている。そこには、アフリカンやヒスパニックの人たちがたくさん住んでいる。有色人種だから、ということではなくて、そういう人たちが低所得だから、そういうところに住んでいる。ニューヨーク市が、そういう団地の地図なんかも公開している。

たとえば、長男が一番最初に通った公立学校は、プロジェクトもそこそこ多くて、学区的に微妙な地域だったので、同級生のガラは相当に悪く、アメリカの学校レビューサイトでも10点中2点だった。そして、人種の偏りが半端なかった。

逆に、いわゆる天才ばっかり集めたようなエリート学校だと、生徒がほとんど中国系だったりする。

大人になってからの移民としてどうにかやっているとあまり感じないが、アメリカはかなりの学歴社会なので、良い学校を出ておかないと結構詰むのと、教育というのは間接的にでもうまく生活することに直結する技術を仕込むものなので、そんな感じで格差がどんどん開く。

そういうどうしようもできない問題がある中で、開き直って移民の排除をぐいぐい進めて、事実上そういう状況を「臭いもの」としてフタをしようとしているのがトランプ政権だし(移民の国としてはそれは自殺だ)、たぶんあんまり日本では報道されていないが、既にいろんな悲劇が起きている。

数日前、アメリカに入るためにメキシコから川を渡ろうとした移民親子の水死体がニューヨーク・タイムズの1面を飾って、物議を醸した。いま、正規の国境から入国すると絶対に亡命できないという状況なので、こういう無茶をせざるを得ない人たちがたくさんいる。

というわけで、選挙前だし、いまトランプは金正恩といきなり会ってみたりとか、「すごい行動力だ!」みたいになって株上がり中だが、現地民からすると、問題を解決するのではなくて、傷口を広げて破壊しているということには変わりがない。

去年、あるジャズミュージシャンがライブで、「自分は、『かつてアメリカと呼ばれていた国』出身だ」と言っていた。喉元過ぎて忘れてしまいがちだが、四年延長はさすがにきついと思う。

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