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0122「NY子育て日報・10日目」

本日も、リビングで長女の様子にアンテナを張りながら相撲見ていて寝落ち。妻からモーニングコールをもらって、7:30頃に起きて、長男を起こす。長男が気だるそうに起きてくる。

そして、トイレに入っていく。トイレから出てきた長男。開口一番報告してくれたのは、「吐いたーー・・・」

3兄弟最後の砦であった長男が陥落した。思わず、笑ってしまった。逆に面白くなってきたのだ。ハードモード突入か。上等だ。やってやろうじゃないか。

究極の最後の砦は、私だ。妻からLINEが来る。

「家にあるビオフェルミンをがぶ飲みして、ビオフェルミンの神様に祈るしかない」

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NY子育て日報も10日目、第4コーナーに差し掛かったところ、名前も、「NYパンデミック子育て日報」に変えたほうが良いんじゃないかという局面、私たちはビオフェルミンの神様に祈ることになった。

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良いこともある。次男が吐かなくなっている。相当に元気になっている。子供は回復が速い。長女も、昨日の20分ごとに吐いていたような状態からはかなり安定している。笑顔も見せるようになってきている。長女の方が治りが速い気がする。妻が言っていた「長女のほうが丈夫」というのは、こういうことなのかもしれない。とはいいつつ、長女の熱を測ったら37.4度、そこそこ熱が出ている。暑いと言って泣く。次男は元気になって、うるさくなってきた。

しかし、長男と次男の先生に、家族がみんなウィルス性胃炎になったことを報告し、休みを宣言する。

こうなってくると、動画を子供たちに見せて落ち着かせるという、一般的に褒められた方法ではないカードを躊躇なく切れるようになってきた。

しかし、ここ数日は、おもちゃの箱開ける系YouTuberの動画とかをYouTubeで見せる感じだった。こういうやつだ。

次男はこの「レオンチャンネル」を見たがる。こういう開封動画って、物欲とそれが成就する瞬間のカタルシスを共有するコンテンツとして、考えた人天才だと思うのだが、中毒性も高いし、「なんとなく教育に悪そう」な感じがある。考えた人天才、という話と、それが良いものか、という話は違う。

そこで気づいたのは、VPN経由でAmazon Prime Videoにアクセスすれば、仮面ライダーの放映版、つまり、開封とかじゃなくてテレビドラマとしての仮面ライダーや、テレビアニメとしてのプリキュアを見せることができるということだ。

なんで今まで気づかなかったのか。いつも、この方法で夜中に一人でバチェラー見て、「友永お前・・・・!」とか言ったりしているじゃないか。

これは私としてはとても良いことで、何しろ、テレビドラマとしての仮面ライダーや、テレビアニメとしてのプリキュアは、プロが時間をかけて、煮込んでつくったものだ(開封YouTubeに比して)。人間、摂取するコンテンツは血となり肉となる。なるべく良いコンテンツを浴びて、それをリスペクトできる人にはなって欲しい。だから、この方法を思いついて、ここ数日感じていたモヤモヤ感がちょっと晴れた。

で、プリキュアだ。合間に3人の様子を見ながら、午前中ガーッと仕事をして、午後になって一息つこうというところで、生まれて初めてプリキュアというものに向き合った。今まで、真剣にプリキュアを視聴したことがなかった。長女と、ついでになぜか、プリキュアに興味がないであろう次男も一緒にプリキュアを見つめる。

幼馴染の2人の女の子がちょっとした行き違いから仲違いする。しかし、誤解が解けて、2人はプリキュアとして変身し、無二の友達として巨悪に立ち向かう。友情回復の物語。

「世界を不幸のメロディーから救うのは、プリキュアだけニャ!」

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この子育てチャレンジも10日目。いろいろあった。疲れで涙腺がゆるゆるになっていたのだろう。途中で涙が止まらなくなってしまった。生まれて初めて向き合いプリキュアで、号泣してしまう程度に、私は遠いところに来てしまった。次男がそれを見て、「あんた何泣いてんの?!」という顔をして二度見してくる。

しかし、意気投合してプリキュアとなった2人が、悪者を普通に蹴ったり殴ったりしているのを見て、「そこはやっぱり暴力で解決するんだ・・・」とも思った。

ついに陥落してしまった長男だが、下の3歳と5歳と違って、12歳である彼は、ある種、放置できる。手がかからない。適当に水分取りながら食えるもの食ってがんばれ! という感じで任せられる。

長男が8歳くらいのときか、初めて長男と2人で、アリゾナに旅行に出かけたことがあった。クルマで親子2人、モニュメントバレーとか、グランドキャニオンとかを回る旅だった。その途中で、長男は突然高熱を出し、入院した。インフルエンザだった。入院して以後は、少しずつクルマを運転して、ラスベガスの方面に向かい、止まっては吐かせ、でだましだまし移動して、ほうほうの体でたどり着いたラスベガスのホテルで、ずっとつきっきりで看病をした。4年くらいしか経っていない。いろんな影響を受けて、いろんなコンテンツを摂取して、全然風呂に入らないわ、ポケットに腐ったリンゴを入れておくわ、フリーメイソンの紋章を書いて回ったりするわ、どんどん変なキャラクターになっていくような気もするが、それでも頼りになる男性に育っている。子育てが親から奪うものは多いし、子育てをしない人生はそれはもちろん楽しい。が、このへんのカタルシスが子育ての中毒性っていうやつなのだろう。酒・タバコ・ギャンブル・サウナ・子育てだ。

長女が、「バナナが食べたい! バナナ買ってきて!」と泣き叫び始めた。あいにく、バナナがない。すぐそこのスーパーに買いに行かないといけない。そんなわけで、コートを着て、長ズボンに着替えてちょっと買ってこようと出た瞬間、今度は次男が泣き始める。原則、小さい子供を家に置いて出かけるのはアメリカにおいては厳密には犯罪なので、遵法精神旺盛に育った次男にとっては、私が逮捕されるのではないかと思って恐怖なのだ。

「外行かないよ。下の階でバナナもらってくるだけだよ。バナナの泉みたいのがあるんだよ。」と嘘をついた。

「じゃあなんでコートと長ズボン履いてるの?! 外に行くんでしょ?!」

と言われる。鋭い。

意を決して、コートを脱いで短パンに着替え直す。

「この格好じゃ外行けないでしょ?」

と言ったら納得してくれた。そして私は摂氏2度のニューヨークの街を、コートも着ないで短パンでバナナを求めに歩く羽目になった。超寒い。HPを削られる。

バナナを調達し家に戻り、寝室に長男の様子を見に行くと、困った光景を目にすることになった。

長男は、窓を開けてカーテンを風で揺らめかせながら、謎のヒーリングミュージックをYouTubeで流し、ミカンの皮を自分の前に置いて座禅のようなものを組んでいた。

「何やってんだよ?」と聞くと、「こうやってリラックスして、お腹が痛いのを忘れるんだ」と言う。黙って扉を閉めた。

次男がかなり回復してきて、エネルギーが余ってきたらしく、かなり暴れて散らかしだした。長女もまだ調子は悪そうだが、追従する。彼らは吐かなくなってきた。

そうこうしているうちに気づいた。「あれ? フラフラするぞ」。「あと、なんか胃が膨満感に包まれていて、気持ち悪いぞ」。誰の話か、私の話だ。体温を測ってみる。37.7度ビオフェルミンの神様は、私を見放したのだ。吐きたくない。吐きたくない。フラフラする。

そして、東京も朝を迎えたタイミングで、伝家の宝刀、妻とFaceTimeでつないで子供の相手をしてもらうというカードを切る。休む。熱が上がる。まずい。今夜もいくつか東京との打ち合わせがある。国士十三面待ち。完全なテンパイだ。

このまま崩れると、完全に動けなくなる。そこで思ったのは、「家事をやれば、なんとか神経とかが活性化されて仕事できる程度になるだろう」ということだ。実際、昔から体調を崩して会社に行っても働き始めちゃえばわりとどうにかなることが多かった。

洗濯して掃除して洗い物して、部屋中の吐瀉物の痕跡を消毒して回る。そうこうしているうちに、なんだか「ビシッ」としてくる。

子供たちがテレビジャパンでやっているアンパンマンを見ている。「イクラ丼ちゃん」というキャラが出てきた。膨満感はあるが、「イクラ丼食いてえ・・・!」と思える程度にはしゃきっとしてきた。

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アンパンマンといえば、どうでも良いことだが、ジャムおじさんとバタコさんは内縁関係にあるんだと結構最近まで思っていたが違うらしい。

次男がどうしても、自分がつくった青い絵の具が混ざった水を冷凍庫で凍らせたいと言うので、気泡が入らないように丸い割り箸の上にコップを置いて冷凍庫に入れた。

子供たちを順番に寝かせて、打ち合わせをする。長男は38.3度でうなされている。私は38.0度。「なんで日報とか書いてんの?」と思う人も多いだろうが、自分でもよくわからなくなってきた。酔狂をやってこその人生であるとも言える。

あと37時間後くらいには、妻が家に戻ってくる。