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ミーガンかわいいと言いなさい

「ぬいぐるみ好きなの?」
「だって…本物には嫌われるから」

『エクソシストを堕とせない』



いや……驚きました。
なにが?
ミーガンちゃんがかわいいんです。

基本的にぼくが映画館行く基準っていうのは、
・予告が面白そう
・多少信頼している人が評価している
のどちらかを満たしたとき。
なんですが今回はちょっと特殊で、たまたまTwitterで例の「ミーガンダンス」を見たことがきっかけでした。ミーガンの中の人をやっている人がカメラに向かって踊ってるやつです。
なんか妙に魅力的なダンスだったもので、これが映画の中にあるんなら見てみようかな、と。
前情報はほぼそれだけ。あとは、まあ、ちょっとトンでるフォロワーが「ミーガンかわいい!」って言ってるなーってぐらい。いつものやつだと思いながら横目で見てましたが。

ところがぎっちょん。本当にかわいかった。
ビビりました。
かわいさにビビったってのもそうなんすけど、映画自体にビビった。
だってこの映画、言うなればアイドル映画なんですもん。


ミーガンが喋る、踊る、歌う。
その瞬間、映画を構成するすべては彼女を輝かせるために機能します。
テーマは鳴りを潜め、物語は彼女を引き出すレールを敷き、音楽は状況ではなく彼女自身を演出し、登場人物は彼女の一挙手一投足へのリアクションに終始する。
すべてがミーガンにスポットライトを当てるために"最適化"されている。

「いいからこの子を見やがれ」的な強引でなりふり構わないやり口には鑑賞しながらニヤニヤ笑いを禁じえませんでしたが、でもそれはやっぱり効果的で、結果ぼくも「ミーガンかわいい!」のうちの一人にされてしまった。
言い訳できません。劇場を後にして数時間しか経ってないのにもうYouTubeでミーガンダンスを7、8回は視聴していますから(リアルな数字)。

だからまあ語れるところって実はそんなに多くなくて。せいぜいどこが好きかって言うことぐらいしかできないんですよね。
ぼくは、ミーガンの動きの非人間性とか、ミーガンの悪ガキに対する高圧的な口調とか、ミーガンのコースター使わなくても窘めないところとか、ミーガンの突然歌いだすとこととか、ミーガンの顔も髪もボロボロでもかわいいところとかが好きですかね。もうかわいいところが好きとか言っちゃってるよ。


まあ、一応テーマはあって。
「道具とAI」
とか、そんなですかね。
話題としてセンセーショナルなんでそれもアメリカの人たちの中で跳ねた理由のひとつなのかなぁと。特にあっちの国はAIに対する危機感が強いので、それがもたらす変化に対する警鐘として捉えられてそうな気がします。
道具として使用するAI。
ポストヒューマンとしてのAI。
後者が登場した時、人間ってこうなるかもよ、みたいな。

でもテーマっぽく扱ってる風で実のところ最後に大怪獣バトルを差し込むための作劇上の方便みたいなところはあるし、つまりそれはやっぱりミーガンの躍動を楽しむためのレールな気もするので、深く考えないのが正解だとは思います。前述したとおり、すべてはミーガンちゃんを祭り上げるための神輿ですから。

あえて言うなら、こういう便利で気持ちいいやつを子供に与えちゃっていいのかい、みたいなメッセージは感じましたが…。そんなこと言われてもナァ。


"推し"って言葉から少し距離を置いているぼくですが、この映画はちょっとばかしその気持ちを教えてくれた気がします。すべてが「誰か」に奉仕していくという状況に対する麻薬的な気持ちよさ。それが『M3GAN』にはあります。結構無茶苦茶なことやってるのに全く陳腐な印象を受けなかったのが、この映画の上手いところであり、同時にミーガンというキャラクターの魅力の証左になってるんじゃないでしょうか。


(画像引用元)


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