黄色の花2

2020年の抱負|歌集を売る・人になる|柴田葵

2020年の抱負は、まず「歌集を売る」です!
どんな美しいヴェールに包もうにもこれを書かねば嘘になります。
昨年末に歌集を刊行しました。全国の書店・オンラインストアで発売中です。よろしくお願いします!

歌集『母の愛、僕のラブ』書肆侃侃房

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読もう!!!
以上、というのも勝手すぎるので、もう少し書きたいと思います。

生活をしていて、つくづく不安がつのり、悲しみがつのる昨年でした。もちろん、楽しいことも幸せなことも一杯あります。第一回笹井宏之賞の授賞式も昨年でしたし、新しい仕事を始めたり、家族といろんな場所へ出かけたりしました。

しかしそれにしても、世間では「ずいぶんなこと」が起こりました。そして「ずいぶんなこと」のうち7割ほどは、人が人を人だと思っていないことを発端としているような気がします。残りの3割は、天災と事故です。

たとえば神様に「お前は自分のことを〇〇だと思っているが、本当に絶対に〇〇か? 揺らぐことはないか? 過去も未来も揺らがないと誓うな?」と問われて、どの範囲なら「イエス」と言い切れるでしょうか。たとえば性別や国籍……私は、自分が女性であることは「他人から決められたこと」のような気がしてなりません。違和感はありませんが、男女という二分する概念には明確な根拠を感じません。国籍について語ると、私は海外で出産した経験があり、そこは出生地を根拠として戸籍を管理する国であったため、産んだ子供には自動的にふたつの国籍が付与されました。知人には結婚などを理由に国籍が変わった人もいますし、国籍もまた「人が人を管理するためのもの」という認識です。誰もがいくらでも変更し得ます。国が無くなることも名称が変わることも、歴史上いくらでもありました。

結局、私自身が「絶対」だと思えるラインは「私は人間である」というところです。「ヒト」は生物学的な分類で、そこに自分が該当しているのは確実だろうと考えます。そして、私だけでなくあなたも人だと確信しています。

だから、私は当然のように人から人だと思われたいし、人は人を人だと思ってほしいです。そうでない場面には強い違和感を覚えますし、不快です。ただし社会は相当に複雑なので、人が人を人だと思うからこそニッチもサッチも行かなくなるケースもあり、矛盾も生じます。行き違いもあります。私自身が間違えることも、改めることもあると思います。でもやっぱり「私は人だ、あなたも彼女も彼もこの子も人だ」と、できるだけ忘れずにいたいと思います。時には、声も上げて。

同時に、私自身が、もっと私を人として扱わないといけません。子供を出産してからというもの「母親にならなくてはならなくては」と思い込みすぎて、結果「なりすぎて」いたようです。たとえば、ある会社の社長が、知人と接するときも、患者として病院にかかるときも「社長」として振る舞うのは滑稽ですよね。私も四六時中「母親」として振る舞うのは相当マズいんだなって最近わかりました。そんなの、四六時中「社長」ぶるのと同じくらい異常なことです。だから、自分の食べたいメニューを注文する。読みたい本を買って読む。見たい展覧会に行く。夜に外出をする。短歌に取り組む。仕事をする。仕事を増やす。疲れすぎる前に休む。そのために、家族とスケジュールを調整することに後ろめたさを感じないようにする。環境や世間の目もありますが、とにかく、私自身の思い込みが強すぎたようです。思い出せ、私は人だ。ひとりの人だからこそ、自分の子供らの力にも(うまくすれば)なれるのよ。

多くの方のお陰で、歌集『母の愛、僕のラブ』は本当に良い本になりました。これが売れるように、私は動きたい。今の私が一番やりたいことはこれです。なので、今年の抱負は「歌集を売る・人になる」。楽しく元気で素敵な売人として、多くの方のお目にかかりたいと思います。

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