50歳50冊 SF編

SF編
読書歴をジャンルで言うならSFの時代が一番長いと思います。
自分で言うのもなんですが、未来志向でクリエイティブな人格になったのは、
「狙われた学園」や「第4間氷期」などを小さい頃から読んでいたからでしょう。
SFジャンルで50歳で5冊を選ぶとかなり大人なセレクションになりましたが、
星新一や小松左京などの日本の古典的な作品も大好きです。

1. ブラッド・ミュージック グレッグ・ベア

バイオ工学がもたらす壊滅的な宇宙の崩壊!SFならではの壮大な展開

SF史上初めてバイオハザードが取り上げられた作品です。
「考える細胞」というワン・アイディアを良くぞここまで論理的に展開させた!
とSFの持つ底力や可能性を実感しました。
印象的なのは「考える細胞」が増殖して行く中で、彼らの「観察」や「思考」のエネルギーの総量が、
不可避的に増大し、それによって世界が崩壊して行く過程がとてもSF的で、いっそ爽快なこと。
そのあり得ない位の飛翔感こそ、SFの醍醐味なのです。

2. リプレイ ケン・グリムウッド

記憶を持ったまま生まれ変わる、
あなたはこのアイディアをどこまで膨らませることが出来るか?

SF作家の凄みは、短編のジャストアイディアを
極限まで考え抜いて長編化する時に発揮されます。
「記憶を持ったまま生まれ変わる」というリプレイのパターンは同じで、
かつ読者を飽きさせないように、何度も反復する仕掛けが必要なるのです。
この作者が思いついたアイディアが
「生まれ変わる度に、年齢が少しづつ上がる」だったのです。
そのルールを知りつつご一読いただくと、この作品の凄みが明確になります。

3. アンドロイドは電気羊の夢を見るか フィリップ・K・ディック

やれやれ自分は本当に人間なんだろうか? 迷想の哲人ディックの深い謎掛け。

難解なディック作品の中でも映画「ブレードランナー」という最良の解説があるだけに
間口が広いのが本作。しかしハードボイルドアクションな映画と違い、
小説の読後感にあるのは、ポッカリと穴の空いた虚無感だと思います。
おいおいディックさん、いったい誰がアンドロイドで、誰が人間だったんだい?
そして、そう思考する自分自身の存在すら怪しくなってくる。それがディックの世界です。

4. ニューロマンサー ウィリアム・ギブソン

電脳空間のビッグバン。ネット時代を予見した「はじまりの書」

1986年において、この世界のすべてが新しく、すべてがカッコよかった。
今振り返ればその後の現実の歴史は、このニューロマンサーの世界観に追いつこうとした30年だったのだ。
まさにこの本からすべてが始まった。ハッキングもクラウドもウェラブルも人工知能もバイオ工学も
すべてがごった煮状態でニューロマンサーの中にあった。

5. 七瀬ふたたび 筒井康隆

そして、少年はSFマニアになった。自分にとってのSFの原点。

これは本というより、TV原作としての思い出です。
少年時代、最も熱中していたのが「少年ドラマシリーズ」でした。
この「七瀬ふたたび」は超能力者グループ VS 人間という、
今でも「Xーメン」シリーズなどで取り扱われる普遍的な闘いを描き切った作品です。
逃げ回る超能力集団には少数民族の悲哀が隠されていたと言います。
超能力の文学的実験を楽しめる作品で、テレパシーを如何に文字化するかなど
筒井文学らしい創造的な表現が満載です。

SFを5作品選出する作業は、意外に難航し、
日本のSFも入れたいのだけど、どれが良いのか悩み、
あっちを調べ、こっちを調べ、小松左京の「エスパー」とか、
「幕末未来人」の原作はあるあるのかとか、
「幻魔大戦」は完結しているのかとか、
自分の読書体験をしっかり振り返ることになりました。
それはそれで、人生の50冊を決める楽しい時間でした。

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