50歳50冊 マンガ編

マンガ編

1960年代生まれの自分にとって、
読書体験とはマンガという媒体が先で、小説などの書籍が後でした。
人生ではマンガから多くのことを学びました。
でも親の世代からは「マンガなんてくだらない、読むのをやめなさい!」と言われました。
明治初期において小説もそうでしたし、今の時代はネットもそういう風に言われています。
でも自分の骨となり、肉となり、血液になってくれた「人生の50冊」を選ぶという観点で言えば
自分にとってマンガを欠くことはできなかったのです。

1. 風の谷のナウシカ 宮崎駿

宮崎駿が創りあげたマンガの芸術!マンガの哲学!

トルーキンが生み出したファンタジー小説「指輪物語」を下敷きして、
禁断の科学による破滅的戦争の後の「人類の業」を描ききった宮崎駿哲学の到達点。
マンガ版を完読してアニメ版観ると、その後のナウシカが背負う運命は壮大で、過酷な試練の連続である。
そして物語の最後には、世界の破滅とナウシカによる世界の救済が描かれる。
「それでも世界は、生きるに値するのだ」宮崎駿のメッセージは明快だ。


2. スラムダンク 井上雄彦

男たちの勇気、友情、勝利が詰まったスポーツマンガの至宝。

団体戦を描いてこれに勝るスポーツマンガはない。
バスケットマン・桜木花道の成長というシンプルな話を
ワンプレイ、ワンプレイのゲームの綾の積み重ねという途方もない細かさで
6年間描き続けたことに感動する。この人は本当にバスケ好きなんだ。

長い物語の中でただ一つだけ使われないパスルートがあった。
天才・流川から初心者・桜木へのパスだ。
このパスに向けて、全てのシーン、全てのピースは最後まで緻密に準備されていた。
山王との最終試合、セリフの一切ない緊迫の中で
我々はこのパスを巡る最高のワンプレイを目撃する。


3. 日出処の天子 山岸凉子

ヤマト朝廷を創った厩戸皇子のタブーに挑んだ歴史漫画。

聖徳太子伝説、超能力、ボーイズラブ、親近者恋愛など
野心的な要素にあふれた少女マンガの革命。
古代史という検証の裂け目を上手く利用しており「あり得ない」を
「聖徳太子ならあり得そう」だと信じさせる。

4. 俺の空 本宮ひろ志

男子として正直にいいます。本当にお世話になりました。

自分史として言えば、「俺の空」を外して人生の50冊のアンソロジーを組むことは不可能でした。
「俺の空」の衝撃は強烈でした。
刑事編の方がストーリーとしては好きだけど、ここはあえて俺の空、それも第1巻!
安田一平よ、第1話の美人女教師との初体験は本気でうらやましかったぞ。

5. おいしい関係 槇村さとる

夢に向かって一生懸命になる勇気をくれる

槇村さとるが描く、夢に真っ直ぐに向かっていく主人公が好きだ。彼女たちを無性に応援したくなる。
おいしい関係」にはもうひとりのヒロインがいるのが素晴らしい。千代ばあと呼ばれる80歳を超える先達だ。
その叩き上げの和食の鉄人から、主人公 百恵は料理の魂、人生の生き方を学ぶ。
それは「料理道」とでもいうべきものだ。
「道」を目指す同じ仲間として、若い主人公と先達の交流が丹念に描かれていることに感動する。


1963年からの「マンガの50年」は素晴らしい発展の歴史だと思う。
いまや日本のマンガは世界のマンガとなり、
世界のエンターテインメントの1ジャンルとして定着している。
マンガ、アニメ、ゲームというクールジャパンの作品群は、
21世紀において工業製品と同じく、日本の武器になる輸出品だ。
自分も多少携わったジャンル、これからも愛し、大事に読み続けていきたい。
今回は、完結していない作品は含まないセレクションにしたが、
「進撃の巨人」「チェーザレ」「ちはやふる」「3月のライオン」の
最新刊が気になる、そんな50歳がいても良いと思う。

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