見出し画像

なのさん

趣味で書いた短編小説をコンテストにぽんっと応募したら、なんと最終選考まで残ったとの連絡がこのまえ入った。受賞は逃したのだけれども、主催者のご厚意で賞金をいただけることになった。大変うれしい出来事であった。じぶんの部屋で小躍りしていたら、右手の甲が本棚の鋭利な部分に当たり、涙を流して悶絶したのは絶対に秘密である。だれにも言うつもりはない。

「たかが最終選考に残ったくらいではしゃぎやがって」

と思っている方がたくさんいらっしゃると推測しているのだが、僕はただの一般人であり、趣味で愉しく書いているだけである。自己満足なのである。許していただきたい。決して、短編小説の受賞をきっかけに雑誌の隅っこの連載を埋めるような作家になったり、インターネット記事のコラムを依頼されるようになったり、そのような将来はまったく考えていない。小銭をぽこぽこ稼ぐ兼業作家になりたいとは、微塵も思っていない。ほんとうである。

賞金をいただいてから、僕は思案した。

「はて、どうしようかしら」と。

賞金と、処女作にしては見事にささやかな結果を残してくれたじぶんの作品を、いったいどうしたらよいのか。僕は悩んだ。悩みに悩み過ぎて、一日三食しか食べられず、睡眠時間は7時間しか取れなかった。もうこのまま僕はすさんでいくのだろうかとさえ思われた。

まず思いついたのは、賞金で卑猥なDVDをたんまり買い込むことである。グラマラスなお姉さんたちを観ながらうはうはするのだ。至福!まさに至福!しかし、冷静になって考えてみると、じぶんのアパートの部屋に卑猥物があるのはいささか危険である。もしチュテキな彼女ができて、じぶんのアパートに招き入れることになったとしよう。僕がシャワーを浴びているときに、彼女がたまたま卑猥物を発見してしまう。シャワーからあがった僕に向かって彼女は糾弾する。「これどういうことよ。わたしがいるのにこんなもの観てるの。サイテー」そして彼女は怒って出ていき、二度と連絡をくれなくなる。こんなことになっては甚だ格好悪い。断固としてそのような事態は回避しなければならない。

そんなこんなでがさごそしているときに出逢えたのが「なのさん」である。なのさんは僕の短編小説を読んでくださり、イラストを描いてくださった。

なのさんは愛媛県出身ということもあり、僕の作品の舞台となっている瀬戸内海をよくご存知だった。なのさんのイラストはほんわかしていて好きだ。淡くやさしいタッチで、それでいてほんのり甘い。なのさんのイラストをあえて食べもので例えるなら、豚骨拉麺。ちゃう。間違えた。わたがしのようだなと思う。

なのさんはイラスト以外にも、ハンドメイドもされている。羊毛フェルトで動物の人形を作られているのだ。それもそのはず。なのさんの実家は手芸屋さんであって、その影響が大きいのだそう。とてもかわいらしい動物ばかり。僕もひとつ欲しいなとは思うのだが、愛猫が溺愛してすぐにだめにしそうなので、ちょっと迷っている。

なのさん、この度はステキなイラストをどうもありがとうございました。

丁寧にやり取りしてくださり、充実した時間を過ごせました。

 【SNS】
・Twitter:@nxn_nano

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?