最近の記事

ドライブ・マイ・カー

2度目の「ドライブ・マイ・カー」を観た。 あまりにも忘れたくなくて暗闇の中、静かにメモを書いていた。 この映画を「男が女との関わりで苦しみから解放される話」、もしくは「自己との向き合い方」というようにまとめることはできないというのが2回目直後の私の心情だった。 ただその点で語るとすれば、話したいことはある。 【作中の男と女について】 主人公・家福は妻の不貞を知りながらも彼女を愛していた。 それは彼女も同じである。 彼女の脚本家としての物語も2人のセックスから生まれ

¥100
    • 左利き、さそり座

      かなり大きな恋をしていた。 愛とは呼べないけれど確実に恋をしていた。 相手のことを知りたくて堪らなかった。 ああ、これを人は「恋に狂っている」と表現するのだろうと。 16になる年、生まれて初めてまともに他人と交際した。私はどちらかといえばその人から好意を向けられた側だった。恋をしていたとはいえなかった。 人として好意はあるから受け入れようとした。 ただ相手が私から離れていった。 他人に傷つけられることを覚えた一年後、 自分の人生史上最大の恋をした。 他人のことを考え

      • でもそうじゃない。

        「みんなこの世界で一人ぼっちで、 自分以外は全員すごく愛し合っている ような気がしているけど、 でもそうじゃない。 本当はみんな、 お互いのことなんかたいして好きじゃないのだ。」 この言葉に出会って長年悩んできたことが 一瞬で腑に落ちてしまった。 私は人より「人の愛情」というものに飢えている。 ただこれは俗に言う「さびしがり屋」や1人で何もできないと言った類のものではない気がする。 とにかく人から“しっかり”と愛されているという確証が欲しくてたまらない。 その割に愛情に対

        • 素手でおにぎりはにぎらない

          ようやっと二十歳を迎えた。 とりわけ何かが変わるわけでもないと思っていたが 外で大っぴらにお酒を飲めるようになることと、コンビニエンスストアでお酒を買えるようになることは、自分にとって案外大きいものだった。 生まれて二十回目の夏を迎えた日、友人と夕飯を食べ、そのあと2人でバーに入った。 そこにはお酒がまだ飲めない時(事実ではなく概念的に)、一度訪れコーヒーを一杯飲んだ。 本がコンセプトのバーらしく、本屋も隣接している。 店内には中年の男性客2人とバーテンダーの女性、

        ドライブ・マイ・カー

        ¥100

          泳ぐのに安全でも適切でもない海で

          当たり前だったことが、いつしか当たり前でなくなることを想像できる人間はこの世にどれくらいいるだろうか。 ふと、最近このように思う。 自分の人生の3分の2を共有している友人と、毎夏、海に行くのが恒例だった。 彼女とは正直言って、気が合ったわけではない。 幼い頃は何の気もなしに人と距離を詰めていたが、成長するにつれて「この人と自分の関係は適切か否か」を考えてしまうようになった。 直感に基づいた合理性で人を見てしまうようになった。 彼女とは連絡を取らなくなった。 特別

          泳ぐのに安全でも適切でもない海で

          300メートルからの夜

          一昨日から昨日にかけて月が怖いくらいに綺麗だ。 夜、音楽を聴きながら歩いたり、走ったり、公園のベンチで何も考えない時間はあったほうが良い。 朝はがんばろうと思わないと「いい朝」を過ごせないけれど、「いい夜」は私のだらしなさを許してくれる。 「頑張らなくていいし、頑張ったところで格好悪いよ」というように。 私は私の街がとても好きだ。 地上から300メートル。 山に囲まれ、海が見える。 コンビニはもちろん自動販売機すら近くにはない。

          300メートルからの夜

          ホーンテッド

          ちょうど去年の今頃の時期にあった不思議な出来事をふと思い出した。 弟が祖父母の田舎から転校してきて、私と母と一緒に住むようになった。 全校生徒十数人の学校からマンモス校に移った弟を心配していたが、すぐに友達を作っていた。 私は家にもあまりいなかったし、子供も苦手なので弟の友人と会っても挨拶を交わすくらいで名前も知らなければ、どこの子かも知らない。 だからと言って「あいつの姉ちゃん、怖い」と弟がいじめられても困るので多少朗らかにしていた。 そんなある日のこと。朝早くに

          ホーンテッド

          ダダダ・団地

          建築物が好きだ。 引っ越しはしないけど内見したいくらい建築物が好きだ。女好きみたいに「女なら誰でも好き」な訳はなく、私にも好みの建物や家がある。 無機質な家(コンクリート打ちっぱなしならなお良い、)外側に螺旋階段があるマンション、そして団地。 そういえば小さい頃住んでいたのも団地だった。 公務員専用団地(そんなものがこの世にあるなんてと、幼いながらに思った)で、団地にしては3棟しかなく小規模なものだった。 公園などというものが周辺になかったため、その3棟から集結して駐車

          ダダダ・団地