ホーンテッド
ちょうど去年の今頃の時期にあった不思議な出来事をふと思い出した。
弟が祖父母の田舎から転校してきて、私と母と一緒に住むようになった。
全校生徒十数人の学校からマンモス校に移った弟を心配していたが、すぐに友達を作っていた。
私は家にもあまりいなかったし、子供も苦手なので弟の友人と会っても挨拶を交わすくらいで名前も知らなければ、どこの子かも知らない。
だからと言って「あいつの姉ちゃん、怖い」と弟がいじめられても困るので多少朗らかにしていた。
そんなある日のこと。朝早くに弟は近所の公園かどこかに遊びに出かけ、母も用事で外に出ていた。
家には私と黒い犬。1人と1匹。
玄関のチャイムが鳴って、インターホンをのぞいてみるとおかっぱで色白の男の子が「弟くんいますか」と言っていた。
初めて見る顔だった。
(入れ違いになったのかもしれない。公園にいることを伝えてあげよう)
玄関の扉をあけると、画面越しで見ていた以上に華奢で、女の子の様だった。
弟についてのことを教えてあげると頭を少し下げ「ありがとうございます」とだけ言って去っていった。
その子のことが少し気がかりで、夕方帰った弟に朝方に来た彼の話をしてみると、そんな友達はいないと言う。
うちの家を知ってる友達とは公園でみんなで遊んでいたし、誰かの友達だとしても後から遊びに参加した子はいなかった、らしい。
二人そろって少し怖くなってしまって、帰宅した母にも同じ話をした。
すると不思議なことに、母も、おそらく同じ男の子が訪ねてきたことがあると言う。
結局、近所の子かもしれない、弟は人気者だね、という話に落ち着いた。
それから一年が経ち、つい先日弟は卒業。家族で卒業アルバムを見ていたときにその男の子を思い出した。
弟と一緒に全クラスの写真を見てみたが、私が話した彼はどこにも写っていない。
一体誰なんだろうか。
また遊びに誘いに来てくれるかも、と言うと弟は嫌な顔をする。
遊びたいだけならポップなお化けだ。
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