ヨルシカ『盗作』レビュー
こんにちは、藍月です。
今日は私がnoteを始めたきっかけでもある、ヨルシカの新アルバム『盗作』の感想を綴ります。
※ここから小説調の文章になります。ネタバレにご注意ください。
7月28日、それは届いた。重みのあるAmazonのダンボール箱だった。
私は帰宅して、それが玄関に置かれているのを確認し、母にこれの正体を尋ねた。どうやら予想は合っていたらしい。待ちわびた新アルバムだった。
早速開封する。『盗作』の内容全てが1冊の本にまとめられていた。洒落てるな、と思う。n-bunaさんはどうしてこんなに私好みの美しい作品を生み出せるのか。
私はまず曲を聴いた。コンポにイヤホンを取り付けて再生ボタンを押す。胸が高鳴っているのが心地良い。
本の前半部分に載っている歌詞を見ながらまだ聴いたことのない音の波を耳に注ぐ。今回のアルバムはsuisさんの低音が尖っていてかっこいい。n-bunaさんとの相性は抜群だと思う。
爆弾魔を聴く前に謎の緊張に襲われた。アルバムトレーラーを聴いた時と同じだ。知っているけど知らない曲。感じたことのない緊張感だった。
ここで色々な曲の感想をただ綴るだけでは面白くないので、簡潔にまとめる事にする。
私は、何となくこのアルバムは最後に向かうにつれて過去に戻っていると思った。それはインストゥルメンタルの題名から、というのもあるが、曲を聴いていて思ったのが、段々と1曲1曲の音程が上がって行っている気がした。まるで、声変わりをする前に戻っていくような感じだ。
この予想は小説を読んだ後、違うな、と思うことになるのだが、一時抱いた思考を綴ってみた。知らないことでしか見つけられないこともある。知らねば分からないこともある。芸術は奥深い。
夜行は、MVからも分かるように子供時代を思い浮かべるが、花に亡霊は何となく、本当に何となくだが、生まれる前…この世に存在する前の曲のような気がした。天国にいるかのような美しい曲だった。
全曲聴き終わると溜め息が出た。私は幸せをお腹いっぱい感じると、幸せの溜め息が出るのだ。創作意欲を掻き立てられる、素晴らしい曲たちだった。
思想犯が公開された時に、誰かが『爪先立つ』は、『妻先立つ』ではないか、と言っていた。まだ小説を読んでいなかったから確信ではなかったが、花人局を聴いて、これは合ってると思う。すごいな、これ思いついた人…と1人で感心していた。
次に小説を読んだ。意外に長くて驚いた。誰が書いているのか、と後ろのページを確認すると、著作n-bunaと書かれていた。n-bunaさん…貴方の感性が羨ましい。この時代、『盗作』なんて題名で世に堂々と送り出すことが出来るだろうか。n-bunaさんは自分の世界と揺るがない自信を持ち合わせている。尊敬すべき人物だ。
途中で本を閉じるのは嫌だったので、一気に読んだ。首が疲れたというのは置いておいて、凄い、とただひたすらに尊敬した。美しい表現と感情の隠された描写が上手かった。尾崎放哉さんの句を好むn-bunaさんらしい表現が詰まっていた。
この作品を盗みたいと思ってしまうほどに。
音楽家の彼は、はっきりとした自分の世界を持っているからか、私よりも遥かに素晴らしい文字を綴っていた。(当たり前だ)
私自身、一気にスラスラと文字を書くのは苦手で、ゆっくりじっくり考えて書いていくスタイルなのだが、この感想をここまで一気に書けていることにゾッとした。愛の力なのだろうか。
話が逸れてしまったが、小説を読むと、曲を聴いただけでは分からなかったその詩の裏側が、するりと脳に入り込んできた。小説内であの曲に繋がる表現だ、というのを理解した時の感覚は、LIVEで次に流れる曲を察知した時の、あの感覚に似ている。
LIVEと書くと、行きたくなってしまったな。月光のLIVEからやがて1年。あの日は腰が痛かったなあ……実は後に腰を疲労骨折していたことが分かるのだが(理由はおそらくバスケ)、LIVEに行ったことを後悔するつもりはない。行けてよかった。『盗作』のLIVEもあるのなら行きたい。もう1作、対になるアルバムが出るのだろうか。この先が楽しみだ。
また話が逸れてしまった。ヨルシカのことは次から次へと話題が出てくる。小説を読んで、少し閃いたことがある。カセットテープが入れられていたあの空間だ。これは、物語内で登場したあの作品ではないか…という考えがよぎった。本型の入れ物。それの中に存在する不気味な穴……。
こういう風に、隅から隅まで工夫されている作品を丁寧に紐解いていくのが楽しい。ただ、この心地良い感覚は1度しか体験出来ないのが辛い。
小説を読んでからカセットテープを聴いた。人生でカセットテープに触れるのはこれが初めてだったかもしれない。開け方すらも分からず、時代を感じた。
父に手伝ってもらい、家のコンポで『月光ソナタ』を流した。n-bunaさんの言う通り、情景が浮かんだ。真っ暗な空に浮かぶ月。その光に照らされる街が一つ。街の中にぽつりと立つ街灯。街灯が照らすベンチ。薄暗い空間の中に、淡い光が漂っている。こんな感じだ。味があった。
『盗作』の全てを飲み込んで、また私はヨルシカが好きになった。正直、春ひさぎを初めて聴いた時、私は嬉しかった。全く万人受けを狙っていない感じがしたからだ。n-bunaさん本人も、春ひさぎの再生数が他の曲と比べて伸びていないのを良く思っていた。そんな尖った彼が好きだ。彼の作る音楽が好きだ。それを噛み砕き自分らしく紡ぐsuisさんが好きだ。
私は、ヨルシカが好きだ。
いかがでしたでしょうか。アルバムを購入した方は共感頂けたでしょうか。所々調子に乗った表現をしているのは大目に見てください。笑
どうやら、このnoteに特定のハッシュタグをつけると図書カードが当たるらしいんですが、私は当たっても勿体なくて使えるか分かりません。笑
それではまた次の投稿で…☆彡.。
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