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物々交換がもたらす穏やかな知の交換

この一月余り、フリマサイトのメルカリで蔵書を売り始めました。

これまではもっぱら書籍の購入にばかりメルカリは使用していました。

しかし蔵書の新陳代謝のために、大幅な放出を考えており、古書買取業者へ連絡をしようと予定しています。

とはいえなかなかそこへ至る時間が見出せず、それでは『とりあえず』ということで、放出予定の書籍をメルカリに出品することにしました。

このフリマサイト出品に対して、これまでネックとして考えていたのは『価格交渉』でした。

具体的には値引き交渉のコメントに返信したり、さらに幾度かやりとりを繰り返す行為に割くリソースが、今の自分にないことがとかく気掛かりでした。

しかしあるとき、売買でやりとりした方が『値引き交渉を一切行わないスタンス』であることを拝見しました。

そこで、こちらの方の方法を参考にさせていただき、プロフィールに価格交渉の相談に応じかねる旨を記すことにしました。

また各書籍の写真は正面からのワンカットのみとし、別角度のカットを掲載することはやめました。

値引き交渉を行わないことに対して、
「不親切では?」

「自分自身が購入する側では値下げ交渉していたのに…」
と自らに思う気持ちもありましたが、
やはりそこへ注ぐ私のリソースの欠乏と、ある方には価格交渉に応じながら、別の方には応じないといった不平等な対応が生じてしまうことの危惧から、予め一切交渉に応じないことを明記しました。

強気すぎると思いながらも恐る恐る販売を開始したのですが、驚くことにほぼ連日のように購入していただけるようになりました。

また私自身が探している書籍がメルカリで見つかると、売上金が累積された残高で購入することが出来るようになりました。

この売買サイクルによってまさしく『物々交換』が実現しているという実感があり、知識の交換が行われている感覚が、リアル書店やAmazonなどでの書籍購入とは異なる、少し興奮した新感覚となっております。

ん?物々交換ではない?

そうですね、一旦売上金というお金に変わっているので単なる売買となるのかもしれませんが、ここには実際の現金が登場していない特性から、私にとっては、読み終えた本を欲する誰かへ送り、私は欲する本をどなたから送っていただくフローになっています。

ここには手数料や送料が発生しており、完全なる資本経済的一コマに過ぎないはずですが、個人的体感としては物々交換という文脈です。

かつて古書店の店主がレジ横で感じていたであろう「こやつ、こういった本が好きなのか」との思いを追体験出来ている気にもなります。

傾向としては、人文系の哲学書、とくに岩波文庫や河出文庫、筑摩文庫などは割合出品して早い段階で購入されます。
それとサイエンス系のバードカバーの単行本なども比較的売れます。

大量に引き取ってくれる古書店は部屋のスペース確保といった面では大変助かります。

一方、もちろん手間はかかるものの一冊ずつ求めている方の元へ届けるといった、フリマサイトを介した販売は、本の持つ情報を求める人へ送り届けるといった行為であり、本好きの私にとっては楽しい体験となっているようです。

おしまい

最後までお読みいただきありがとうございます。 いただいたサポートは麦チョコ研究助成金として大切に使用させて戴きたいと思います。