ポケモン:情報アドがある状態の択ゲーについてその2

こんにちは。ゲーム理論見習い中のぴらんです。前回カイリューVSハバタクカミを例に型バレしていないことによる利益について考えてみました↓。

今回はその一般化として読み当てた時の利益が動くケースについても考えていきたいと思います。元々前回の記事と一緒に投稿する予定だったのですが、少し間が空いてしまいました。前回の記事と合わせて見ていただけると幸いです。

要約

前回相手視点で型がわからないという情報アドがある場合での択ゲーを考察しました。これに計算に関連して読み当てた時の勝率が変数になっている場合への一般化を行いました。この場合でも前回と同様に型が推測される確率の逆数倍のぶんだけ勝率が向上することがわかりました。マイナー型で型が推測されにくい場合は非常に大きい利益になることが期待できます。

はじめに

前回は読み当てたら勝ち、読み外したら負けという状況について型バレの利益を計算し、勝率が$${\frac{1}p}$$まで増加するという結論を得られていました。(ここで$${p}$$は相手視点でのこちらがサイコショック持ちカミである確率。$${p}$$は100%は超えないので$${1/p}$$は1以上になる)。

しかし、その択だけで試合が決まってしまうような択というのはそう何回も起こることではありません。この択を読み当てればその試合は8割勝てるが読み外すとそのあとでひっくり返せる確率は4割くらいしかない・・・といったように読み当てた時と外した時の勝率を自由に設定できる理論があると便利そうです。

そこで今回は読み当てた時と読み外した時の勝率を変数で置いたまま計算を行い、より一般的な状況について調べてみました。

問題設定

自分の選択肢は上と下の二種があるとし、相手の選択肢は右と左があるとします。

この時相手が左の選択肢の時にこちらが上の選択肢を選んだら勝率$${a}$$、左の選択肢の時にこちらが下の選択肢を選んだら勝率$${b}$$となるとします。
前回のカミVSカイリューの例だと$${ a = d = 100\%、b = c = 0\% }$$です。

$$
\def\arraystretch{1.5}
\begin{array}{c|cc}
 & 左 & 右 \\ \hline
上 & a & c \\
下 & b & d
\end{array}
$$

$${c}$$が読み外した時の勝率なので、$${c}$$との差分を使って計算して最後に勝率を出す時に$${c}$$を足すようにすると計算しやすいです。つまり以下のような行列を使って計算し、最後にこちらの勝率に$${c}$$を付け加えます。

$$
\def\arraystretch{1.5}
\begin{array}{c|cc}
 & 左 & 右 \\ \hline
上 & \Delta a & 0 \\
下 & \Delta b &\Delta d
\end{array}
$$

$$
\Delta a=a-c\\
\Delta b=b-c\\
\Delta d=d-c
$$

計算

カミカイリューと同様に計算します。計算の流れは前回と同じです。

こちらが選択肢上を選ぶべき確率は$${ x=\frac{\Delta d-\Delta b}{\Delta a-\Delta b+\Delta d} }$$

最終的な勝率は$${\frac{\Delta a \Delta d}{\Delta a-\Delta b+\Delta d}}$$に最初に分離しておいた$${c}$$を加えたものになります。

次に自分のポケモンについて二つの型があり、相手視点ではどちらの型か確定できないという情報アドバンテージがある場合を考えます。

こちらのポケモンに選択肢下を持たず上しか選択できない別の型があり、選択肢下を持つ型:選択肢下を持たない型の比率が$${p:1-p}$$になっているとします。

選択肢下を持つポケモンが選択肢上を選ぶ確率を$${x}$$、選択肢下を選ぶ確率は$${1-x}$$とします。

この時選択肢相手視点でこちらポケモンが選択肢上を選ぶ確率と選択肢下を選ぶ確率はそれぞれ以下の通りになります。

選択肢上:$${px}$$
選択肢下:$${p(1-x)+(1-p)}$$

相手が選択肢左右を選んだ時のこちらの勝率は次のとおりになります。

選択肢左:$${\Delta apx+\Delta b(p(1-x)+(1-p))}$$
選択肢右:$${\Delta d(p(1-x)+(1-p)) }$$

相手視点での選択肢左と選択肢右の勝率が等しくなる点でこちらの勝率が最大になるので、次の式が成り立つように$${x}$$を選ぶのがベストになります。

$$
\begin{equation}
\Delta apx +\Delta b(p(1-x)+1-p)=\Delta d(p(1-x)+1-p) =\Delta d(1-px)
\end{equation}
$$

これを解くと選択肢上を選ぶ最適な確率$${x_0}$$は$${x_0=\frac{\Delta d-\Delta b}{p(\Delta a -\Delta b+\Delta d)}}$$  (2)となります。なお$${x_0>100\%}$$となる場合は$${x=100\%}$$となる場合分けが発生しますがここでは省略します。

相手視点ではこちらがどの型かわからないので相手視点でのこちらの勝率と選択肢下を持ってる型の勝率と、選択肢下を持たない型の勝率はそれぞれ異なります。

相手視点でのこちらの勝率は(1)のどちらかの辺に(2)の$${x_0}$$の比率を代入すれば求まります。

$$
勝率= \Delta d(1-px)=\frac{\Delta a\Delta d}{\Delta a -\Delta b+\Delta d}
$$

選択肢下を持っている型の勝率を求めます。$${x}$$を下から$${x_0}$$に近づける時が最も勝率が高くなります。
$${x<x_0}$$では相手は100%左を出すのが合理的なので左を100%出す相手に上x、下(1-x)で出す時の勝率が選択肢下を持っている型の勝率になります。

$$
勝率=\Delta ax +\Delta b(1-x)=\frac{\Delta a\Delta d}{p(\Delta a-\Delta b+\Delta d)}
$$

選択肢下を持たない型の勝率を求めます
下を持つ型と同じく100%左を出す相手に対してこちらは100%上を出すので確実に読み負け勝率は0になります。

以上の結果をまとめた上で最初に「最後に付け加える」と宣言していた$${c}$$を付け加えると↓のようになります。

$$
\def\arraystretch{1.5}
\begin{array}{c|c}
 & 勝率 \\ \hline
相手視点& c+\frac{\Delta a\Delta d}{\Delta a -\Delta b+\Delta d}  \\
下を持つ型 & c+\frac{\Delta a\Delta d}{p(\Delta a-\Delta b+\Delta d)} \\
下持つ型(型バレ)&c+\frac{\Delta a\Delta d}{\Delta a -\Delta b+\Delta d}\\
下を持たない型 & c
\end{array}
$$

ここで$${相手視点の勝率=p\times 下を持つ型の勝率+(1-p)\times下を持たない型の勝率}$$が成り立っていることには注目する価値があると思います。それぞれの勝率は独立に求めたにも関わらず期待値の関係式が成り立っています。

考察

結果を見ると型がわかっている場合は$${c+\frac{\Delta a\Delta d}{\Delta a -\Delta b+\Delta d}}$$だった勝率が、下を持たない型が環境に存在し型がわからなくなることで$${c+\frac{\Delta a\Delta d}{p(\Delta a -\Delta b+\Delta d)}}$$へと勝率が上がっていることがわかります。

$${p}$$は相手視点でどの程度自分が下選択肢を持っているように見えるかを表していますからマイナー型では$${p}$$は小さく、結果として勝率が大きくなることがわかります。逆数ということで$${p}$$がある程度0に近いマイナー型になると択ゲーの勝率が一気に高くなることがわかります。

また、型がわかっている時の勝率のうち$${c}$$の部分は読み外しても保証されている勝率ですから、択ゲー部分には関係ない定数項とみなすことができます。そのため残りの$${\frac{\Delta a\Delta d}{\Delta a -\Delta b+\Delta d}}$$の部分が択ゲー部分に関連する勝率になります。型バレ時の勝率と型バレしていない時の勝率を見比べてみると、この択ゲー部分が$${\frac{1}{p}}$$倍されていることがわかります。これは前回のカミVSカイリューの結果と一致します。

したがって同じ勝率でも$${c}$$が小さく択ゲー部分への依存度が大きいほど$${p}$$に強く影響を受け、型バレの影響が大きいことがわかります。

また$${a}$$や$${d}$$は$${\Delta a=a-c}$$の形で乗算で勝率の式の中に含まれています。読み当てた時の勝率が大きいほど択ゲー全体の勝率にも良い影響があることがわかりますが、乗算なので$${a}$$だけ大きいまたは$${d}$$だけ大きいのように片方だけ大きくても他方が0に近ければ択ゲー全体の勝率は大きく減少することがわかります。つまり択ゲーはそれぞれの選択肢が両方とも読み当てた時のリターンが大きいことが重要です。

あとがき

いかがでしたか?
前回のカミVSカイリューで1/pになると言っていたことが、かなり一般的に拡張できることがわかったと思います。逆数というのはかなり強くて、マイナー型で使用率0%に近いような場合は1/pが0割されるのに近くなるわけですから勝率がめちゃくちゃ大きく向上することが期待できます。もちろん択ゲーまで持ち込まなきゃ意味はないわけなので単に技構成がバレにくいというだけではダメですが、かなりロマンのある結果になったんじゃないかと思います。

ではまた次回お会いしましょう。次回はTwitterのフォロワー様が面白そうなツールを制作してくださったのでそれに関連した何かをつくれればいいなーと思ってます。でわでわ~~~


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