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エイリアンは黙らない(チョーヒカル)

日本で生まれ、中国人の親を持ち、アメリカに滞在しているアーティストのチョーヒカルさんによるエッセイ。な自分のことがエイリアンのように思えることが多々あったため、「エイリアン」そして本文を読めば分かるが、主張し続けるという姿勢から「エイリアンは黙らない」というタイトルなんだと思う。強い意志を感じて、とても気持ちがいい本だった。

テレビでも紹介されたことのある「バナナなはずが、きゅうりにしか見えない」作品だったり、「ピザに見えるが、切ってみたらかぼちゃ」だったりというチョーヒカルさんの「じゃない!」と「やっぱりじゃない!」も合わせて読みたい。

本題に戻るが、この本は現代において世界中で多くの人がもつ疑問や悩みの種に水をやるエッセイだと思う。マジョリティーに隠れてしまったマイノリティーのための本ともいえる。

全てが赤裸々で、ある意味で誰の味方でもないが、敵意の無い優しさに惹かれてしまう本だった。いろいろな側面、つまりそれは国籍や肌の色、性別や思想、洋服の着方など多くの感性に触れてきたからこそ堂々と連ねることのできる言葉がぎっしりと200ページほどの紙に詰まっていた。

さらに五感で感じた全てのことを吸収してはその度に吐き出してしまうような、ある意味でチョーヒカルさんの不器用さも伺えて、端麗で精巧なペイントアートからは想像のできない人物像がこのエッセイを読んでいて伝わってきた。自分というものが分からない中でいろいろな定規に自分をあてがって試しているような、覚えたてのお酒に戸惑いながらも中身の分からないお酒を一つ一つ飲んでみているようなイメージだった。

私はこの本を読んでみて、日本にいるとなかなか味わうことのできない感情を味わわせてもらったと思っていてとても刺激的だった。日本は島国であったり、歴史的なシガラミから日常的に外国人の方と接する機会が少なく、どうしても外国人を見ると異質な目で見がちであると思う。これからそういう価値観が変わってほしいと思うし、まさにここに働きかけた力強いエッセイだった。外国人のことをガイジン‼ガイジン‼と呼ぶ人にぜひ読んでほしい。

最後に、この世界に潜んでいる人間の皮をかぶったエイリアンたちはこれからももっと主張していってほしいと思う。いまはそれがエイリアンだったとしてもそのうちそれが逆になるかもしれない。八本くらい足の生えてそうなチョーヒカルさんの「エイリアンは黙らない」でした。

https://www.shobunsha.co.jp/?p=6866

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