拒絶~「保つ」ための受容と拒絶~⑫

2.グレゴールが死んだ後の家族の関係性
カフカの「変身」では、グレゴールが死んだあと、家族は外に買い物に行く場面で締めくくられる。

家以外の描写が出てくるのはここが初めてである。

家族はそれまで姿を見ることを避け続けたグレゴールを初めて見ることをした。

母であるザムザ夫人は彼の死を自分の目で確かめた。

父であるザムザ氏は「これでやっと神様に感謝できる」と十字を切った。

妹のグレーテは彼がやせ細っていたことに気付いて自分が差し出した食べ物を受け入れてくれなかったことを指摘した。

妹と母と父は寝室に集まり、3人で泣き腫らしてグレゴールの死を悼んだ。

父は下宿人を追い出し、仕事を休んで外に出ることを女2人に提案し、彼女らはそれを受け入れた。

そして電車の中で互いの将来を話し合い、グレゴールが見つけた家を引き払うことを決意した。

ザムザ夫妻は美しく成長した妹の姿に気付き、結婚相手を探すことを展望した。そうしてこの物語は終わる。

グレゴールの死に直面したのにも関わらず、それを受け入れ晴れやかな気持ちになっているのは、彼の死によって心境と共に関係性が変化したからではないかと考える。

また、グレゴールがいなくなったことにより、それまで家庭内でしか完結していなかった彼らの世界が外側に向くようになったといえる。

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