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異訳 面白きこともなき世をおもしろく

さて、

たまに気が向いた時に書くnoteなので、久々にて。
WSDのアドベントカレンダーは2020年に書いて、昨年は書いていないので2年ぶりです。
※私の自己紹介などは2020年の記事内にて割愛します

今年は何を書こうかなと考えてみて「面白さ」をテーマにしてみることにします。2022年の中で改めて考えたテーマでもあり、提供している場でも問いとして投げかけた機会も多く、振り返りがてら、で。

面白さと言うとワークショップ文脈ではplayfulという言葉を浮かべる方もいるかも知れません。それとの違いを考えると僕が今回考えている面白さというのはその場での面白さの担保と合わせて、場の事前事後含め、自身の在り方の面白さについてというのが簡単な表現になりそうです。

ワークショップを含めた場づくりって、参加した皆さんが楽しんで熱狂して気づきを得て仲良くなるようにしなくては!と意気込んでしまいがちな所ないですかね?僕はそればっかりだと疲れちゃうんです。もちろん、そういう場も大切で参加したい(提供したい)です。
でも、そうでない静かに味わう場も欲しいし、時には昔桃井かおりがCMで発した「世の中、お利口が多くて疲れません?」というフレーズが脳内をリフレインすることもあるのです。

なもんで、ここでは
面白い場をつくるのって色々やり方ありそうだ、
ってのが主張で、それをぼんやり受け止めてくれる位に聴いてもらえたら嬉しいです。

ある日僕が面白さについて考えるキッカケとなったのは2つの問い

笑えるだけが面白さだけではないよね?


これは僕が提供している販促文脈のコンテンツ”全P連(全日本POPとそれにまつわる諸々のこと連盟)”の中で良く話していること。
僕のキャリアでモノを売る手法のひとつとして「面白いPOP」がありました。笑えるとかウケるというPOPですね。
そもそも自分で面白いと言っちゃってるのもダサいので弁解しておくと、すでにこの現場から離れて10年以上経っても「あの店のPOP面白いよね」
と言って頂く機会が多いので一般的に面白いと思ってもらえている、ということでひとつよろしくお願いします。

未だに面白いよね、と言って頂ける反面、たまに続けて言われるのが「でも、ウチの店や普通のスーパーでは受け入れられなそう」。
確かに、提供の仕方を間違えばふざけているとも取られかねないPOPなので、ウチじゃ難しいと思われるのです。

でも、実際に僕らが放っていた面白いPOPというのはちゃんと違った意図がありました。
それが面白さ(面白い)という言葉の意味に込められています。
とある辞書で出てくる面白いの意味をまとめたのががこちら。

そうなんです。笑える、ウケる以外でも面白いって色々とあるんです。
実際のPOPで笑ってもらえた人の次に出てくる言葉に「そうなんだ!知らなかった」「これ誰かに教えたい」と言ってもらえることも多いです。
つまり、僕らもここで言っている笑える以外の面白さも色々と伝えていたのです。
今年も色んなメーカーさんやお店や事業者さんに向けてこの面白いの意味について話す機会が多くありました。
その上で面白さの意味にこんな言葉を繋げていました。
「お客様にとっての”面白さ”ってのはすなわち”顧客価値”なんです。価値を感じてもらえることで”ココロが動いて”手が伸びるんです。」
すると現場の皆さんにはフムフムと納得してもらえるわけです。

モノ売る話になっていますが、場においても参加者のココロが動く価値提供は命題ですし、その為にはこれらの面白さが不可欠です。
改めて、自分が提供している場での面白さって何だろうか?とふと思ったのが「笑えるだけが面白さではない」なのです。

今面白くなければダメかしら?


提供する場の内容にも寄りますが、1,2時間でワイワイ楽しい場もあれば、企業研修の様に半日、一日、複数日にまたがる長い時間が必要な場もあります。それは当然場の目的と目標に準ずるので単純に長ければ良いわけではありません。
しかしながら長い時間が必要な内容でも昨今のオンラインの場の増加とオンライン研修疲れ問題もあり、短い時間でのプログラムをリクエストされることも少なくありません。そうすると本来場の中でプロセスを経て感じられる様に設計した面白さが、途中端折られた故に面白さが感じられないということも起こってしまいます。
あるいは、面白さを感じる所までの理解に時間が足りなかったり。そうなると、面白さを感じてもらうのに「続きは持ち帰りご自身で」という形になります。

「続きは持ち帰り~」とリンクするのですが、もともと僕の提供する場の内容が売り方や伝え方、振り返り方だったりするので参加者が本当に
面白さを感じてもらえる瞬間はその後の実践で売れた!伝わった!気づいた!という瞬間なんです。
もちろん当日その場で面白い!と思ってもらうこともありますが、それはこれから何かが変わる、達成できる予感や確信の面白さです。
本当の面白さはその先にある。時間内に僕が最終的に伝えたい面白さを伝えきれないことも多いです。
特に、参加者には色んなニーズがあって、「実践をする場を持っている方」とそうでなくて、私と同じように「場を提供する立場の方」がいます。
ここでは後者の方がこの様なケースで面白さを感じられない方が多いと感じています。
その理由は、実践してみないで面白さは感じられないのに、本当の面白さを感じないまま、やり方(理論)だけで人に伝えることを目指しているからからかも知れません。
言うが易し、でも実際には簡単にはいかない。

そんなこんなで、僕はプログラムを創っている中で、当日のリアルな盛り上がりがイメージできないことがあった時に「今面白くなければダメ?」と考えました。結果その先の面白さにワクワクしてもらう設計でもよかろう、と今の僕は考えています。

面白いとは何か?面白く生きるには?

面白さを考える上で大きく参考となったのがミステリー小説で有名な森博嗣
氏のこちらの本

森さんの面白い経験から語られる面白さが面白さを考える上で刺激となり、とても面白い内容です。
と、、、、、面白さが交通渋滞を起こしていますね。失敬。
内容を僕なりにまとめると、、、面白さは複雑で面白いの仕組みが解明されるならばそれだけで億万長者だ。
なので、万人に向けた解明は出来ないにしても面白さを創り出そうとしている人のヒントは沢山ある。そして、面白さは生きることの価値でそれを知る、実行することは人生を面白くなる、ということ。
と書かれています。

その中でも特に僕が面白いと思ったのは「孤独でも面白さがあれば大丈夫」といった内容。
近年世の中ではエンディング、終末、孤独、孤立などをキーワードにしたコンテンツが増えてきたように感じます。
例えば代表千葉さんをはじめとする(一社)コレカラ・サポートの提供するコミュニティコーピングというボードゲームも社会的孤立がテーマで話題を集めていて、その理念や活動は面白く、僕も注目しています。興味ある方は覗いてみて下さい。

孤独も孤立も似たような意味に捉えられ、どちらもネガティブな印象を受けますが本書にて森さんは、

「そもそも孤独は、それほど酷い状況ではない。最低でもなければ、最悪でもない。」
「僕の面白さは、ほとんど孤独から生じる・・」
「自分のペースで生きられる。自由を感じられる体験」

と書いています。
加えて

「自分一人で面白いと思えるものを探すこと。」
「他者に依存した面白さは持続しない。」
「結局人間は死ぬときは一人だ」

とも主張しています。


それらの点に自分を照らし合わせてみて僕はこう振り返りました。
・意外に思われるのだが僕は周りが思っているより、群れるのが好きじゃなかったりする。
・一人遊びをする方が圧倒的に多い。
それは僕が興味が散漫で多岐でマニアックなのが一人遊びが好きな理由だと思われます。自分の面白さに人を付き合わせるのも申し訳ないのと、一人の方が気を遣わなくて心地良いのも理由です。
僕は他人から社交的だとよく言われますが、それは孤独の面白さがあれば、相手に好かれも認めてもらわなくても全然OKという前提で向き合っているからかも知れません。

逆に、その場の前提や状況に染まらなくてはいけない雰囲気が超苦手です。すぐに窮屈になって無になるか、その場から立ち去りたくなるのはそういうことなんだと思い当たりました。。

ここまで、本書から場づくりについて学んだこと。
それは、人が感じる面白さはその人の人生や日常から得られたそれぞれに影響するので、こちらが提供する意図と受け止められ方が違っても然るべき。
ゆえに、その場の人と空気を読むことが大事。フロアを沸かすDJみたいなものです。
あ、これってワークショップデザイナーとして当たり前の所に繋がりましたね。
加えて、参加者に眠っている面白さや知らない面白さを引き出すのも場を創る者の命題となりそうだと思いました。。

面白さを育てる日々


面白さを提供する為には、自分自身も面白がり方を知らないといけないと考えます。
どうしたらいいか?
これは、もう面白いことを自分なりに「探し続ける」「増やす」「やってみる」ことに尽きると思います。
書を捨てて街へ出ようとか、越境してみるとか色んなやり方はありますが、一言で言えば「興味を持って自分の五感で確かめる」ことなんじゃないでしょうか。
人間が進化の過程で他の動物と違ったことの一つは、火を手に入れた事だと言われています。恐れを知らず火に興味を持っちゃった、ってことです。
安全安心が叫ばれている世の中ではありますが、多少の限界突破を伴った興味も未知なる面白さの為には必要かも知れませんね。
遠慮はしなくて良いかも知れません。だってあくまでも、まずは「自分だけの面白さ」ですから。
人に共有しなくても良いし、多少お痛しちゃってもそれが他に得難い面白さだったりもします。(←自分の過去の反省に言い聞かせている。)
しかし、あくまで人様に迷惑をかけない範囲であることを留意しましょう。
溢れる情報とタイパとやらで、気軽に知ったつもりになれて、我が物顔で語れる時代です。でも、解ったつもりで実際はそうはいかないことも沢山です。
多少の痛みを伴っても自分で経験した面白さこそが本当に面白いと僕も思います。

面白さの残し方について


これは僕はそういえばこうしているな、ということを紹介してみます。
偉そうに書き出しましたが大した事してません。
やっていることと言えば、基本的にはなんだかよく解らないし、その場では上手く言語化できないがココロが動いたモノ、コトは「スマホに収める」「ダイアリーに貼る」位です。
「スマホに収める」は僕と街を歩いたことある方はご存じでしょうか、僕は何か気になると年中立ち止まって、無駄に写真を撮ります。
先日ちょっと旅行しても2000枚位撮ってました。。。。お陰でよく解らない画像がスマホの容量の8割を占めています。

そして、「ダイアリーに貼る」は街中でもらったチラシ、レシート、ショップカード等は基本的にダイアリーに貼っています。
貼るだけ。何もコメントしない。しかし、なにも文字は書いていなくてもそれらの貼り付けてあるモノを見るだけでその時が思い出せたりします。

画像もモノも一つ一つに確固たる意味付けをして選定しているわけではないですが、それぞれに大なり小なりの自分のココロが動いた興味関心は宿っているっぽいです。。

一見役に立たなかったり、その時は上手く自分に意味づけられていないようなことも、いつか何かのタイミングで輝く時があります。
暗黙知が顕在化したり、カクテルパーティー効果ってやつでそれまで見えていなかったモノコトが見えてくるようになったりもするようです。
僕にとってはそれこそが面白さだと思っていて、場を創る上でのそんなピカッと輝く瞬間を仕掛けられないかな、、、といつも思っています。
よくセレンディピティとか偶発性とかとも言われますが、それはこの様にこれまで経験した中からの無意識や暗黙知あってこそだと思っています。

今年公開されたトップガンの続編もスラムダンクの新作アニメもなぜあんなに興奮して繰り返し観に行くのかと言えば、作品にリンクした自分の人生の経験や思い出が溢れてきているからかもしれません。
何も紐づくものが無ければみんなあそこまで熱狂しないのではないでしょうか?

面白きこともなき世をおもしろく って?


ここまでとりとめもなく長々と書いてしまいましたが最後に本文のタイトルについて。皆さんご存じの高杉晋作の辞世の歌です。
私も好きな言葉です。(※メフィラス構文)
そして、この歌の意味について誤った解釈をしがちなのも有名です。僕の昔の同僚谷水君もいつも間違えた解釈で自分のポリシーとして語っていたのが懐かしいです。この歌は加えられた下の句と合わせて本当の意味を成すとのことです。

「面白きこともなき世をおもしろく / すみなすものは心なりけり 」

世の中つまらないから、面白くしよう!
ではなくてつまらない世の中を面白くするのはあなたの心構え次第
って事なんですね。(※一部諸説あり)
誰目線で言うか?という感じですが、僕も同意です。概ね。

タイトルに異訳という冠をつけたこと、
それは今って自分自身の面白さを形成する要素と情報が無限にあるのからその心構えも日々変わっちゃっても然りだよね、と考えているからです。
だから概ね同意。故にちょっと異訳。
全ての物事が移ろいゆく現代社会において、頑固一徹己の道を貫かなくてもOKという考えです。
今日面白かったことが明日面白くなくなってもいいじゃないですか。
新しい面白さをどんどんアップデートしてもいいじゃないですか。
それ位柔軟にテキトーに面白きことなき世を面白くすれば良いじゃないですか。
一番大切なのはその面白さは同調性に引っ張られていない自分のものか、ということ。
今年ふと考え、悶々とした自分が場で提供すべき面白さについてのここまでが一つの解と解釈で、それを想いながら書きなぐってみた体たらくが、以上です。

正面からでも反面教師としてでも何かしら汲み取れるところがあればこれ幸いです。

そして、面白さは日々変わるという点で、来年には全く違う思考になっているかもしれない旨もご容赦下さい。

WSDアドベンドカレンダー、他の皆さんの記事を拝見しながら色んな面白がり方してるなーと、楽しんで拝見しました。
ここしか空いていなかったのですが末席で書かせていただいたがの私にて未だ恐縮です。

気を取り直して、、、
さて、来年はどんな面白いことが待っていてどんな面白がり方をするか。
各位、面白がって参りましょう!

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