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泣きながらご飯を食べるということ

悔しい。
やっぱりどう考えても悔しい。

あれもこれも、あまりに悔しくてたまらないときには食欲も失せてただひたすらに泣いてしまう。

二股のショックに1日1食しか食べられなくなっていた私に
「払っておくから夕飯も食べなさい」と言って
ランチもウィンナコーヒーも奢ってくれた上司の優しさに「今日こそは食べよう」と決意した。

帰りの電車に揺られながら、自分のために何を作ってあげようかと考えているとなんだかなんでも食べられそうな気がしていた。

だけどいざ帰宅すると、暗い部屋にポツンとひとり。
さっきまでの食欲はどこへやら、たちまち思い出したくないことを思い出し、考えたくないことを考え、また泣いた。
でも食べなきゃ。今日こそ食べるんでしょうと、
お昼に奢ってもらったサンドイッチとウィンナコーヒーがお腹のあたりで私の様子を伺っている。
自分のためじゃなく、優しい上司に明日「ちゃんと夕飯食べました」と報告できるように食べなきゃ。

やっとの思いでベッドから起き上がり、電気をつけたものの、何も作る気は起きなくて、冷凍庫からとうもろこしご飯を取り出す。
職場の人にもらったとうもろこしを、週末にお鍋でご飯と一緒に炊いたもの。
味付けはシンプルに塩を小さじ1のみ。
電子レンジが温め終わるのを待っている間に、なんだか死にたくなってきた。
自信喪失。空虚。劣等感。
チンと鳴った電子レンジに、すぐには反応できなくて2回か3回呼ばれてようやく熱々のとうもろこしご飯を取り出した。

お椀に盛ることもできず、ただラップを広げた状態のままでお箸でつつく。
もうどうだっていいのだ。だって死にたいし。
そう思いながら口に運んだとうもろこしご飯。
一口食べて広がる、とうもろこしの旨みと少しの塩っ気。
美味しい。どうしようもなく美味しい。
でも悔しい。なんでこんなに悔しい。
気付けばまた泣いていた。
死にたいと思う気持ちとは裏腹に、箸は確かに私の意思で私の口へ次々にとうもろこしご飯を運んだ。
とうもろこしと塩小さじ1。
この味を忘れまいと思った。
まだ生きようと思った。

泣きながらご飯を食べるということ。
死にたいと思いながら生きるための行動をするということ。

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